3 熊本のトラック運転手 クマさん
小雨が降る中、長崎道(久留米から長崎方面に向かう高速道路)の入り口で「長崎」の札を出していました。
久留米から長崎に向かう車は相当少なく見えて、必死でアピールをしていました。家からお菓子は持っていっていたのに、なぜか折り畳み傘を持たなかった僕はびしょ濡れで、「ああ、こんなやつ乗せたくないやろなあ、、、」なんて考えていた時に4tトラックが止まりました。
「マジで!?」と思いながらダッシュで向かい乗り込みました。そこで出会ったのがクマさんです。
僕「すいません、びしょ濡れで、、。長崎まで行かれますか?
ク「長崎市内には行かないけど、佐世保までなら行くよ。久留米から長崎市内まで
の真ん中くらいだね。そんなことより体、拭きなよ」
クマさんは初めて出会う僕に自分のタオルを渡してくださいました。そこでもなんだか心が温かくなって泣きそうに。しばらく乗っていると、クマさんが「飯食った?」と。僕は素直に「まだです。」というと金立(きんりゅう)SAでご飯を食べることに。クマさんは「ほいっ」と言いながら僕に1000円札を渡して、「これで食べなよ」と言ってくださいました。ありがたくご馳走になりました。(お腹が空きすぎて写真は取り忘れた)
そこから車に戻って、佐世保まで向かう車中、クマさんのこれまでの人生の話を聞きました。
高校二年生で親と喧嘩をして家出。そのまま博多の屋台通りに行き、バイト。一晩働いてもお給料は3000円だったそうです。
そのお金を握りしめて朝からパチンコに行き、買ったらその日はカプセルホテル。負ければまた屋台通りでアルバイト。こんな生活を3ヶ月続けていたそうです。それから家に戻って高校を卒業。その後、トラックの運転手で働きましたが、腰を痛め退職。建築のお仕事に就く中で結婚。ただクマさんの金遣いが荒く、多額の借金を背負って離婚。その後、オーダーメイドのスーツの会社の営業をされていましたが、再び運送会社に転職。今の奥さんはその時、出会った方だそうです。
ク「今の奥さんは、俺の曲がった人生を丁寧に丁寧に伸ばしてまっすぐにしてくれ
ようとしたんだ。だからこの出会いは特別だとわかった。ひらくんも今はまだ
ないかも知れないけれど、人生の転換を迎える人に必ず
出会うよ。だから「この人だ」って感じたら決断するんだ。」
僕「そんな出会いありますかね~」
ク「もしかしたらこの旅であるかもしれないよ。いつそんな出会いがあるかわから
ないんだ。」(残念ながらそのような方には出会いませんでした、、、)
佐世保も近くなってきた頃、こんな話をクマさんとしました。
僕「クマさん、僕、仕事やめたんです。次は自分に合った仕事が見つけられたらい
いなと思うんです。」
ク「いいんじゃない?俺だって転職ばっかりの人生だけど、無駄なことはなかった
よ。スーツの営業の仕事が今の運送の仕事に役立ってることだってあるよ。こ
れから大変なこと、いっぱいあると思うけど何事も経験
だよ。チャレンジして行きなよ」
破天荒な人生を送っているクマさんの言葉だからこそ僕に響いた言葉でした。
ク「佐世保で下ろすけど、一時間、佐世保で荷下ろししてその後熊本に戻るからヒ
ッチハイク捕まらなかったら熊本まで送っていくよ。電話番号教えておくから
困ったら電話しなよ」
最後まで優しいクマさんでした。写真は「いらんいらん」とのことだったのでトラックの外観だけ取らせてもらいました。