じゃそれで(Up to you)

オーストラリアで旅をしながらお仕事をする生き方を実践しています。

タイ旅行4(チェンマイとフォローティングボート)

午前6時40分、バンコク・スワナプーム国際空港からチェンマイ空港に向けた飛行機が飛び立った。

フライト時間は2時間弱。僕は少なくともここ数日の中で最も快適だと思われるクッション性のある椅子で寝るように努めた。

しかし空調が効き過ぎており寒くて寝られない。空調が効きすぎて、と感じたのはこの旅で3回目だがここまでくると僕の体温管理機能を疑わねばならないような気がした。

 

 

チェンマイに着くとツアー名の札を持ったおじさんが笑顔で迎えてくれた。

そのおじさんの運転するピックアップ車の後ろ側に半ば強引に乗り込み、拠点となるホテル兼カフェテリアに向かった。

 

 

そのホテルはエキゾチックな雰囲気が満ち満ちていた。プールもあれば噴水もある。だが不思議と豪奢な印象は受けない、そんな不思議なホテルだった。

僕は出発時間までの間に朝食をいただくことにした。カフェテリアに行き、昨日のフルーツが美味しかったことを思い出し、トーストとフルーツのプレートを頼んだ。

50バーツ、約200円程度だがトースト二枚とバナナ、スイカ、パイナップル、それにコーヒーが付いたものだった。やはりフルーツが全て美味しかった。

タイランドはフルーツが最も美味い食べ物であると心に刻み込んだ。

 

 

時間になりワゴン車が迎えにくる。最初は僕だけだったが徐々に他のツアー客も増える。

ポーランド人の夫婦、フランス人の少年二人組、バンコクから一人で旅行に来たという女性、マドリードから来たバックパッカーらしき男3人組。

それに日本人の僕とドライバーとガイドのタイ人がいたので、非常に国際色豊かな車中となった。

そんな状況で自然と車中の共通言語は英語となる。フランス人の少年二人は英語が喋れないようで、二人でフランス語で喋っていた。

 

 

最初に向かったのはエレファントライディング。響きはかっこいいがつまり像に乗るのだ。

僕はそれを甘く見ていた。ツアー客にさせる体験など、ちょっと背中に乗って歩かせて終わりだろうと考えていたのだ。

しかし実際のそれは、かなり深い川を渡り、高低差のある崖を登り、背中の傾斜も激しく何度も落ちそうになるものだった。

中にはゾウが小さく膝近くまで水に浸る者、川から出た後、像は自ら砂を体に吹きかけて乾かすのだが、その砂をもろに被る者もいた。

餌用に買ったバケツ入りのバナナは籠ごと奪い取られた。

こう書くとかなり乱暴なゾウたちに当たったような印象を受けるかもしれないが、ゾウたちはあくまで穏便。

穏便なゾウに僕達人間は振り回されていたのだ。

 

 

次に向かったのはマエワンという滝だった。正直、フィリピンのシキホルやドゥマゲテでも滝の類は掃いて捨てるほど行ったので行く気にはなれなかったがツアーでそうも言えずとりあえず向かった。

思った通りそこまですごい滝ではなかったが付近のベンチで横になり、滝の音を聞きながら眠りにつくのは正直気持ちがよかった。

 

 

正直、このツアーはあまり思い出に残っていない。

つくづく感じたのは、僕はツアーなど集団行動が強いられるものに向いていないということだけだった。

ツアー参加費は決して安くはなかったが勉強代ということで片付けるしかなかった。

 

余談になるが、フィリピンに帰って先生たちにツアーに参加したという話をすると、

「あんた、本当にヒラ(僕のイングリッシュネーム)か??」を問われた。

どうやら傍目から見ても団体行動に向かない人間に見えているのだと、妙に納得してしまった。

 

 

ツアーから帰るともう夕方である。翌日は早朝よりフローティングマーケットに参加するためその日は早く寝なければならなかった。

宿のない僕は当たり前のように空港に向かっていた。ほぼ無意識だったように思う。

 

空港で食料を買い、いつもの寝床に帰る。目が覚めると時間は午前6時だった。

朝の7時にはカオサン通りの近くのオフィスにいかなければならない。

さすがに空港のチェアで疲れが取れるはずもなく、重い腰を上げてタクシー乗り場に向かった。

 

この時間帯は、電車が動いておらず前日の調査によるとタクシーで向かうしか方法はないようだった。

しかし、何を思ったのかこの時僕は再度カオサンへの行き方を、バックパッカーらしき人のブログを見て模索していた。

 

するとこの時間にカオサンに向かうバスがあるという。しかも50バーツ。タクシーの10分の1以下の値段である。

それもタクシー乗り場のすぐ向こう側にバスは僕を迎え入れるかのように待機していた。

 

早速バスに乗り込み窓際の席に座る。と言ってもバスには窓際の席しかないのだが。

到着時のタクシー以外は移動手段が電車だった僕は、バスに揺られながらタイの町並みを眺めようと思ったのだ。

 

 

バスが動き出すと冷房が全開にかかる。最初は心地よかったもののすぐに冷蔵庫のチルド室のような寒さになった。

しかも冷房の通気口は壊れていて空調の方向を調整することができず僕の頭に直撃してくる。

思わず僕は帽子を脱ぎ、通気口を塞ぐように固定させた。そして降車時、その帽子を取り忘れた。

僕はいつもこのような時、「ああ、きっと忘れるだろう」と意識している。そしてその予想を裏切らないことが多い。

 

 

 

 

何はともあれカオサンでフローティングマーケットへのピックアップカーに乗車した。

目的地のダムヌンサドゥアックまでは片道2時間ほどかかるというので寝ることにした。

 

車が止まる衝撃で僕は目が覚めた。どうやら到着したようだった。

よろよろと車から降りると、そこは僕は求めていたローカル感溢れるマーケットだった。と言っても水上マーケット随一の観光地なのだが。

 

ちなみにこの水上マーケット、フローティングマーケットとはイタリアのベネツィアよろしく迷路のような水路に所狭しと船が浮かんでいる。

その上で商品が売られていることはもちろん、客も金を出せば乗ることができる。

船に揺られながら商売船のものを買えるというわけだ。

それ以外にも、水路の両端には店舗が立ち並び、客を乗せた船は逐一、店前に船を寄せる。

欲しければ買えばいいし、欲しくなければ次の店までまた流されるというわけだ。

 

 

ガイドの説明が終わった後、早速僕は船のチケットを買い、待ち時間を使って乾いた喉を潤せられる何かを探した。

ここで水を買うのも芸がないと思ったのでアイスか果物を買うことに決め、迷った結果マンゴーを買った。

もともとカットされていて、食べやすくなっている。これで50バーツ(二百円)だ。

日本感覚だと安いが、フィリピン感覚だと1Kgも買える値段である。

 

時間となり船に乗り込む。僕は一人客のため一番前に乗せられたが、その後ろに乗ったお姉さんが危うく船を転覆させかけてかなり危なかった。

その後、頼りない漕ぎ手が乗船し船はゆらゆらと出港する。

漕ぎ手の見た目は期待を裏切らず、僕たちの船はどんどん他の船に抜かされていく。それだけでなく水路が詰まった場合は、幾度となく後戻りをする。

ゆっくりと水路を回れるからいいかと最初は悠長に構えていたが、一箇所に15分ほど停留した時にはさすがに船内はどよめいた。

 

日本人観光客もかなり来るからか、至る所で日本語の看板が見られた。デタラメなものもかなり多かったが。

水路脇の店舗はその古い見た目からは想像できなかったが、ほとんどの場所でカード払いもできる。

結局、僕は昨日飲んだタイのビールChangを一缶購入するだけに至った。

 

 

 

その後も時間があったので僕は食べられるだけのローカルフードを食べた。

ココナッツアイス、汁なし麺、フライドバナナなどはかなり美味しかった。

今思えばそのどれもが50バーツ程度だったので一食ごとの平均価格が自然と統一されているのかもしれない。

それにしても汁なし麺と揚げただけのバナナが同等の価格とは価格設定はかなり適当である。

 

 

そういえば僕がタイで自信を持って美味しいと言えるものが果物以外でもう一つあった。

それはタイのアイスティーである。これと言って特筆する特徴もないのだが、あの暑さの中で飲むさっぱりとしたアイスティーは最高だ。

特にチェンマイのツアーから帰ってきたときに飲んだカフェテリアでのタイアイスティーは特に美味しかった。

僕はタイでバナナを5本も食べ、アイスティーを3杯も飲んだ。

 

 

 

この水上マーケットでのツアーがこのタイ旅行の中では最も楽しかった。

僕には美味しくて安い食べ物があれば十分なのだと再確認できた。

 

 

 

帰りはなぜか行きに乗ったところと全く違うところで降ろされ、抗議をしたが運転手に英語が通じず、運転手は困った顔をしたまま硬直していた。

かと言って他の乗客を待たせるわけもいかないので歩いて次なる目的地に向かうことにした。

 

この後、僕は旅行会社の社長、二日前ビールを奢ってくれたチェルシーと飲みに行く約束をしていたのだ。ツアーから帰り次第、僕はオフィスに向かうことになっていたのだ。

僕はひとまず事情を伝えるために彼に電話をかけた。すると彼は原付バイクにまたがり迎えに来てくれた。

徒歩1時間は覚悟していたためこれにはかなり助かった。

 

 

オフィスに到着してしばらくすると、チェルシーはビール瓶を抱えて僕の元に来た。

どうやら宴はオフィス内で開催されるらしい。

部下らしき男達も徐々に集まり、軒先には七輪が置かれイカを焼いたり、すり鉢で唐辛子をゴリゴリすりつぶしたりと宴の準備が進められた。

僕はその間もチェルシーやニッキー達とビールを片手に牡蠣や寿司などを食べた。

日本の寿司とはかけ離れたものだが、これはこれで別の料理としてみるとなかなか美味い。

辛いもの好きのタイ人は醤油が半固形でわさび色になるほどわさびを投入するが、これもタイ寿司とよくマッチした。

牡蠣も生のものをいただいた。新鮮かどうかは残念ながらわからなかったが、味はかなり美味しい。

ビールのアテとしては一級品だと言えよう。

 

 

酔いも程よく回って来たところで、宴の準備は整った。

オフィスの外、それも普通の遊歩道に机が並べられてビール、ウヰスキーソーダ、焼きイカ、寿司などが並んだ。

先ほど、若手がゴリゴリすりつぶしていた唐辛子はパクチーと絡められ醤油に浸され、イカ用のドレッシングとなっていた。

僕は残念ながらパクチーが苦手なためにそのドレッシングは勧められたときだけ食しただけに留まった。

 

酔いも回って来た頃、ニッキーが連れて行きたい店があるという。

話を聞くと風俗店だということで、興味がなかったので断っていたが、そういえばタイの風俗産業はかなり活発だと聞いたことを思い出した。

覗くだけでもいいから、ということだったのでそれもまた面白そうだと思い行ってみることにした。

 

僕は社員のトゥクトゥクに乗せられオフィスを後にした。彼らとはここでお別れだ。

しばらくすると怪しげな店の立ち並ぶ街並に入り込む。社員はトゥクトゥクを一つの店舗の前で止めるとここだ、と言った。

すでに話が行っていたのかその店の社員らしき人物がスムーズに僕を店に案内した。

 

中に入ると、幅がかなり広い三段のひな壇があり僕の入店に気づいた女達は、急いでそのひな壇に並んだ。

その焦りようたるや、かなり暇だったのだと見える。

僕は一応値段を聞いてみる。男は2500~3000バーツ、女性によって値段は異なるのだと言った。

残念ながら僕にそんな大バーツはない。そのほとんどを水上マーケットで消耗してしまっていた。

 

僕はあっさりと店を後にし、外で待っていた社員に最寄りの駅に送ってもらうように頼んだ。

チップを払おうと思ったが目安がわからない。彼に聞いてみたが「アップトゥーユー(君次第だよ)」と悠長なことを言うので100バーツ渡しておいた。

かなりホクホク顔で去っていったので破格のチップだったのかもしれないが、そんなことは後の祭りである。

 

 

こうして僕のタイ旅行は終わりを告げた。

心残りといえばチェンマイの夜屋台に行けなかったことぐらいであろうか。それもまた再度訪問する理由と考えれば後悔の念は全くない。