じゃそれで(Up to you)

オーストラリアで旅をしながらお仕事をする生き方を実践しています。

オーストラリアの二十四の瞳

今週からオーストラリアでの生活が2週間目に入った。ホームステイをしているお陰か、特に苦労したことは今の所ない。強いていうならば自転車のサドルが固すぎて痔になりそうだということぐらいか。

 

 

今週から変わることといえば大きく二つ。一つは自転車登校が始まるということだ。片道40分ほどの行程は体力的にキツいものがあるが、自転車があるおかげで自由に行動がしやすくなる。また、どうせ体力が有り余っていても仕方のない生活をしているので丁度良い運動になりそうだ。

もう一つの変化は、今日から一つ上のレベルのクラスに変わるということだ。

 

 

 

朝はいつも通りシリアルを食べ、少し早めに出発することにした。ジョセフィーナから事前に学校へのショートカットを聞いておいたので早く着くはずだったが、迷ってしまっても遅刻しないようにするためだ。

 

一昨日、ジョンとジョセフィーナの寝室に入れておいた自転車を引っ張り出し僕は学校への道のりを漕ぎ出した。相変わらずサドルは硬いままだ。

 

オーストラリアの自転車規則は日本と比べると少し厳しい。ヘルメットは着用していなければ200ドルの罰金を取られるし、前後のライトと後ろの反射板についても付けねばならないらしい。僕は夜間走行をする予定はなかったが、今日にでもライトくらいは買いにいかねばならないというつもりだった。

 

 

自転車での登校はかなり快適だった。ゴミ処理場の前を通過する2、3分を除いてだが。処理場前一帯はかなり強烈な悪臭を発しており、車で並走するオーストラリアン達も思わず顔をしかめてウインドウを閉める。まあ、僕たちの出すゴミを処理してくれているのだから文句は言えないだろう。

 

 

学校までは右左折を数える程度したぐらいで、ほとんど一本道だったため迷わずに到着した。よって始業30分前には学校に着いてしまった。

僕はカフェテリアでパソコンを開き、昨日の日記を書き出した。どうやらこれがルーティンになりそうだと思った。そういえばフィリピンにいたときも5時ぐらいには起きてカフェテリアで読書をしていた。こうやって朝の時間を使うのは有意義な感じがして好ましい。

 

 

始業が近くなると僕はひとまず以前通りのクラスに向かう。朝一発目の授業のみ以前のクラス、次からのクラスが変更後のクラスになる。月曜日ということもあり授業での話題は「どのような週末を送ったか」というものになった。

聞くとキャンプをした者、カジノで大敗した者、仕事をしていた者など様々だった。僕は市場で半日を潰していた。それはそれで楽しかった。ただ来週末も同じことを繰り返すわけにはいかない。何か考えねば。せっかく自転車を購入したことだから二日間かけて行けるところまで行くのも面白いかもしれない。ケアンズに来て以来僕は面白いことに飢えていた。

 

 

休み時間には僕を含めた数人のクラスメイトで他愛もなく話をしていた。丁度韓国からの学生がいたので、韓国料理の話になった。そこで僕はいかに石焼ビビンバを愛しているかを必死に伝えたがちょっと引かれていたような気もする。韓国語では石焼ビビンバを「トルソッビビンバ」と呼ぶらしい。そんな流れからチーズタッカルビを肴に誰かの家で飲もうということになった。写真でしか見たことがなかったが、チーズと肉と野菜の鉄板焼き、うまくないわけがない。ここは社交辞令にならず、実現させたいと思った。

 

 

 

休み時間が終わるといよいよ新たなクラスに移った。日本人4人、台湾人1人、ブラジル人2人、チリ人2人の9人構成で以前のクラスよりも小規模で国際的だ。これはありがたかった。

僕は中学1年生で習いそうな冠詞の問題に四苦八苦しながら午前の授業を終えた。英語での会話自体は難なくできるようになって来た一方で、グラマーについては詰めが甘くネイティブと会話をするときはしょっちゅう僕の文法は直された。どうせ机上で覚えたところで忘れてしまうから、こうやって実践によって修正してもらう方が自分には合っていると思った。

 

 

昼休みの時間はKマートに向かい自転車のライトを購入した。物価の高いオーストラリアにしては5ドルと意外に安価だったことに安心した。ライトを探す過程で遭遇した幼児向けの赤ちゃん人形は全く可愛くなかった。なぜここまでセンスがないのだろう。それともリアリズムに命をかけることがオーストラリアにおいては最優先なのだろうか。この人形が12体いたことから僕は思わず『二十四の瞳』を思い出してしまった。こんな生徒12人はおなご先生も投げ出すだろう。

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ライトを買った後はすぐに学校に戻り、カフェテリアで地道に日記を書き残していく。家ではできるだけホストファミリーと会話をしたいのでこうやって時間を節約しているのだった。

 

 

午後からの授業も無事終了し、自転車で市街地を巡ることにした。そこで僕は気づいてしまったのだ。ほぼ歩きで主要な場所を回ってしまっていたということを。自転車で行けども行けども知っている場所にしか出ない。知らない場所に出たとしてもそこは住宅街であったり、広い敷地があったり、未知との出会いという言葉とはだいぶ程遠いものだった。

このケアンズという街は素晴らしく整備され、過ごしやすくなっている一方で雑然とした宝探し的歩き回りには適していないのだ。

 

 

僕は絶望的な気持ちでいつもの海沿いに行き、ベンチの上にゴロンと寝転んだ。何はともあれ読書をしようと思ったのだ。長編紀行文『珍夜特急』はシーズン2に入っていた。僕の読書量は持て余す時間に比例する。

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そんな生活のためかCrizからの会話で何気なく出た韓国旅行というものが非常に魅力的に映った。午前の友人との会話のこともあり、自分が韓国人によく間違われることもあり、韓国という国が非常に身近に感じられて来た。こうなれば行くしかない、という気持ちになって来たのである。

 

 

 

そうこうしているうちに時間は5時前だ。ここケアンズは昼間は暑いくせに夜は風が強くなり肌寒くなる。昼仕様の服装の僕では、日が落ちてしまうと適応できなくなるのだ。僕は自転車を漕ぎ漕ぎ、ホストハウスに戻ることにした。家ではジョセフィーナと美味しい晩御飯が待っているはずである。

 

 

 

帰路の途中、朝はゴミ処理場の悪臭で気がつかなかったがフィッシュマーケットがあることに気づいた。その規模は普通の店舗と同じぐらいだが、ここケアンズで鮮魚類が並ぶ様を見るのは稀なような気がしたため立ち寄ることにした。

 

残念ながら閉店間近の鮮魚市場からはほとんどの魚が姿を消していた。残っていたのはカブトガニのような甲殻類とシャケの切り身だけだった。このカニなのかエビなのかわからない生物は味動向の前にあまり食指が動かないような気がするのは、僕が異文化からの訪問者だからだろうか。

僕が見たいのはオーストラリアサイズのでかい魚だったが、閉店直前となっては仕方がなかった。僕は明日の登校前にでもまた寄ってみようと思い店を後にした。

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家に着くとジョセフィーナが元気に迎えてくれた。彼女は人に元気をもたらす不思議な力を持っていると、先週トムと話していたのを思い出した。

僕はささっとシャワーを浴びて夕食にありつくことにした。今日の夕食は、サーモンがまるまる一匹鍋に入ったスープと、どう見ても見た目がお好み焼きのフィッシュケーキ、ウインナーとミンチ肉のトマト煮とご飯だった。

今日から僕は彼女に倣い、小骨だらけのサーモンは手で食べることにした。何事も異文化に入ったときは模倣から始めるものだ。インドに行けばご飯を手で食べるとともに、トイレは紙を使わないでおこう。

お好み焼き改めフィッシュケーキは味すらもお好み焼きだった。マヨネーズとおたふくソースが欲しかったがどうやら持ち合わせていないようだ。フィッシュ感はあまりなかったが久しぶりにお好み焼きを食べられた気がして懐かしさがこみ上げた。

今日のメニューのMVPはウインナーとミンチ肉のトマト煮だった。贅沢なミートソースといった感じのこの料理は最高にご飯との相性がいい。オーストラリアのウインナーの素晴らしさはすでに述べたが、何度書いても書き足りないくらいに美味しい。

あまりに美味しそうに食べる僕を気に入ったのか、ジョセフィーナはホームステイが終わっても飯を食いに来いと行ってくれた。社交辞令であろうとなかろうと必ず食べに来ようと思った。

おそらくホームステイから脱した後の食生活はかなり貧弱なものになるだろう。そんな時のジョセフィーナのご飯は砂漠のオアシスのようなものだ。

 

 

 

食後は再びジョセフィーナとテレビを見ていた。タイのアクション映画だった。タイかどうかは確証が持てなかったが、主人公が象を飼っているという設定がタイ以外に当てはまる気がしなかったのでそう判断した。主人公が敵に像を奪われ、それを取り返す過程で別勢力の敵にも狙われるという散々な映画だった。CGとワイヤーをいかにも駆使していますという感じのアクション運びは少々滑稽にも見えた。

内容のせいか、自転車で往復したせいかわからないが眠気がひどくこの日は早めに就寝することにした。