じゃそれで(Up to you)

オーストラリアで旅をしながらお仕事をする生き方を実践しています。

【パース9日目】初めてユキノと観光地のフリーマントル(Fremantle)に行ってきたの巻

実はユキノと観光地に行くのは今日が初めてだ。

僕は彼女から言わせると「ひねくれている」ので、

あまり観光地とか、たくさんの人がすでに行っている場所やしていることはしたくないと思っている。

 

しかし昨日のブログにも書いた通り、僕の愛読書『死ぬ瞬間の5つの後悔』に出てきたフリーマントルという観光地へのお誘いだったため勢い余って行くと約束をしたのだ。

 

 

結果から言うと「フリーマントル最高!」と言わざるを得ないほど楽しんだ。

特に試食ができるマーケット。果物をたくさん食べたり、

フィッシュ&チップス(購入したもの)を摘んだりするのが最高だった。

 

結局、食べ物が美味しければ満足してしまうのが僕だ。

 

 

 

僕らが住むベイズウォーターは、スワン川(白鳥の形をしている川)の白鳥の頭の上あたりに位置している。

一方でフリーマントルはほぼ半島となっている場所の先にあるので距離的にはかなりある。

しかしベイズウォーターからフリーマントルまで乗り継ぎなく行けるというのも、煩わしくなくて助かった。

 

 

朝6時に目覚めた僕は出かける前に一仕事を済ませてユキノの起床を待つ。

その後、我がシェアハウスの日曜日の恒例となっている掃除を済ませて、

サンドウィッチを二つ作り、紅茶を水筒に淹れて旅立った。

 

 

電車に揺られること約30分程度でフリーマントルに到着する。

(電車内でワクワクする僕達)

f:id:hira-jasorede:20180916212901j:plain

電車を降り切符を駅員に見せると、怪訝な顔で僕たちを呼び寄せた。

 

「おい、ちょっと君たち」

「な、なんですか」

「君たちの切符を見せなさい」

「ええ、わかりました」

「君たちはここにどれぐらい滞在するんだ?」

「多分、3〜4時間程度かと思います」

 

硬い表情を浮かべた駅員と僕たちの間に緊張した空気が流れた。

そして駅員は口を開く。

 

「二人以上で電車に乗るならファミリー券を買いなさい。そっちの方が安いんだから」

 

この駅員は僕たちに「お得な電車の乗り方」を神妙な顔で教えてくれたらしい。

そんなことならできればもっと気さくに話しかけてほしい。

 

 

そんなわけで無事、フリーマントルに降り立った。

f:id:hira-jasorede:20180916214101j:plain

 

最初に向かったのはレインボーシーコンテナというモニュメントだ。

駅からパースシティ方向に歩いて20分程度の距離にある。

(ちょくちょくお洒落な空間が広がるのがパースのいいところ)

f:id:hira-jasorede:20180916213019j:plain

 

市内からフリーマントルの方向に、海に向かって流れ込む穏やかな汽水域の川をバックに「レインボーシーコンテナ」は座している。

f:id:hira-jasorede:20180916213034j:plain

 

この巨大なモニュメントもさることながら対岸の建物がいい味を出している。

少々、風は強いがレインボーシーコンテナとリバーサイドの風景が同時に楽しめるのでおすすめ。

f:id:hira-jasorede:20180916213119j:plain

 

レインボーシーサイドから来た道を戻り、

次に向かったのが「フリーマントルプリズン」だ。

プリズンブレイクの熱狂的なファンの僕としては是非、見てみたい施設だった。

 

 

レインボーシーサイドから海側に20分くらい歩き向かった。

その間、僕は我慢できずにチョコスプレッドのサンドウィッチを食べてしまった。

 

 

ちなみにフリーマントルはパースの街並み同様に、ただただ街並みが美しい。

歴史ある建物を改築して、外観はそのままに新たなオフィスが入居していたりするので街の風情がとてもいいのだ。

だから町歩きだけでも十分楽しめる。

 

 

フリーマントルプリズンに着くと早速エントランスに向かい、二の足を踏んだ。

f:id:hira-jasorede:20180916213220j:plain

というのは入場料が22ドルと今の僕には出せない値段だったからだ。

ありがたいことにユキノも入場料を見て顔を引きつらせていたのでここはプリズンの外観を見て退散することにした。

f:id:hira-jasorede:20180916213149j:plain

 

 

その後、歩いて10分弱の場所にあるマーケットへ。

その名も「フリーマントルマーケット」!

f:id:hira-jasorede:20180916213300j:plain

ここがフリーマントルのハイライトとなった。

 

中に入るとフィリピンのウェットマーケットやケアンズのラスティーズマーケットを彷彿とさせる賑わいだ。こういう場所が僕は何よりも好きなのだ。

見ているだけでワクワクとしてしまい、ユキノのことを忘れてうろうろと市場内をさまよった。

f:id:hira-jasorede:20180916213344j:plain

f:id:hira-jasorede:20180916213430j:plain

f:id:hira-jasorede:20180916213536j:plain

f:id:hira-jasorede:20180916213720j:plain

一通りうろつき終わり(試食も終わり)、僕達は市場内でたまたま見つけたフィッシュ&チップスを注文した。

フィッシュ&チップスはケアンズから出発する前から彼女が長らく食べたいと言っていたものだったので、タイミングも良かったことから食べることにしたのだ。

 

たくさんのフレーバーのソースをカップに注ぎ、フィッシュやフレンチフライにかけて食べた。フィッシュが限りなく焼きホッケに近い魚だったのでポン酢をかけて白ご飯で食べたくなった。

f:id:hira-jasorede:20180916213620j:plain

 

 

その後、マーケットを出て街を歩いたのち、カフェでひと休憩する。

なんだかんだと駅に着いてから3時間も歩きっぱなしだった。

僕とユキノはコーヒーを飲みたいと言ってカフェに入りながらも、

それぞれ思い思いにスムージーを注文して飲んだ。

(スムージーを待つユキノ)

f:id:hira-jasorede:20180916213801j:plain

 

 

休憩が住むと再び街を歩き出す。

フリーマントルが魅力的なのは、ブリュワリー(ビール醸造所)の多さだ。

そしてブリュワリーとバーが一体化しているので出来たてのクラフトビールが飲めるのだ。

いつかブリュワリー巡りをしたいと思う。

 

 

そこからいくつかの観光地を訪れた。

「バザーズビーチ(Bathers Beach)」

f:id:hira-jasorede:20180916214907j:plain

 

「ラウンドハウス(Round House)」

f:id:hira-jasorede:20180916214009j:plain

「イーシェッドマーケット(E-SHED MARKETS)」

f:id:hira-jasorede:20180916215514j:plain

 

それぞれネット上に感想は溢れているので感想は割愛する。

 

 

そんなこんなでフリーマントルを満喫した僕達は再び電車で帰宅をした。

 

今回のフリーマントルツアーは驚くほど無駄のない旅順で回ることができたので、

もしフリーマントルを回る際は是非参考にしてほしい。

 

フリーマントルの旅順】

1 フリーマントル

2 レインボーシーサイドコンテナ

3 フリーマントルプリズン

4 フリーマントルマーケット

5 マーケット付近のカフェ

6 バザーズビーチ

7 ラウンドハウス

8 イーシェッドマーケット

9 フリーマントル駅(イーシェッドから近い!)

 

 

 

全く僕はユキノに着いていっただけだったが、彼女にはツアー経路を考えるセンスがあるようだ。次はブリュワリーも入れてもらおう。

 

帰りにユキノがこんなアイディアを閃いた。

「明日は電車で一駅一駅順番に降りて探検してみようかな」

 

とても面白いアイディアだ。パースの観光地だけでなくローカルな場所を知ることができる。

こんないいアイディアは僕のライティングの締め切りが迫っている時以外に提案してほしいものだ。

 

そういうわけで明日はユキノの探検にお供するために、今日は俄然ライティングをガシガシと進めなければならない。

 

 

 

<宣伝>

10月6日に紀伊国屋電子書籍ストアにて

拙著『なぜ孤独を恐れるのか?20代の君を人間関係の疲れから開放しよう!』が発売されることになりました!

海外生活の中で考えてきた人生哲学のようなものをまとめて、

読後に人間関係の悩みから解放されるような本です。

良かったら手に取ってみてください。コメント欄から質問などもいただけます。

なぜ孤独を恐れるのか?20代の君を人間関係の疲れから開放しよう! / 森島啓/MBビジネス研究班 <電子版> - 紀伊國屋書店ウェブストア

f:id:hira-jasorede:20180915181916j:plain

 

 

【パース8日目】ヒラ、ジジイになる

何時に寝ても6時台には目が醒める

手足が末端冷え性で冷たい

珈琲を飲むと眠れない

お腹が空かない

散歩が好き

 

 

僕はどうやら海外に来ておじいさんになってしまっているらしい。

 

昨日は午前1時まで目が冴えてしまっていたので、この日起きるのが何時になるか不安だったが自然に6時台にいつも通り目が覚めてしまった。

 

昨晩、眠るのが遅くなったのは僕の人生の書である『死ぬ瞬間の5つの後悔』を再び読み始めたからだ。

 

死が迫ってくる前に、誰もだ避けられない死に正面から向き合い、受け止めることができたなら、手遅れにならないうちに、人生で大切なものの優先順位を変えることができる。

自分にとって本当に大切な事柄にエネルギーを注げる。残された時間が限られていることを意識すれば、たとえそれが何年間か、何週間か、何時間かわからなくても、他人の評価や過大な自意識にそれほど振り回されなくなるだろう。

そんなものでなく、自分の子ことからの望みに従って行動できるはずだ。

 

私は目の前のことだけを考えようとしながら、人生の問題の根本的な解決策を見つけようともしていた。私は自分のこういうところが嫌いだ。

いつも大胆なことをしたいと思い、困難な状況を自ら繰り返し作り出してしまうところが。けれどやめられない。自分が最も恐れている状況に自分を追い込んで苦しんだ挙句、毎回、運の助けを借りてどうにか切り抜けて来た。

そして運頼みな行動をとれば取るほど、不安で追い詰められた気持ちになり、毎回どんどん苦しくなっていく。

 

気づきと後悔と喜びと苦悩を繰り返す作者はまるで僕のようで、そして僕にとって大切な気づきを与えてくれる本だ。

 

この本を読むといつもハービーベイで家に泊めてくれたケンとクリスを思い出す。この夫妻はまるで哲学者のようで、英語で話していても彼らの言うことがよくわかったし、僕も思ったことを話すことができた。

 

丸腰の自分を、丸ごと受け入れてくれた感覚は忘れられない。

 

 

 

早く起きて二度寝もできない僕は仕方がないので、暖かい布団から抜け出してシェアルームの冷え切ったリビングで久しぶりに仕事を再開させた。

 

毎回ライティングをしていると思うのは、丁寧な仕事を返した相手からだけ再び依頼がもらえるということだ。

 

僕はライティングが好きだから基本的には丁寧に心を込めて書く。しかし追い込まれて疲弊しているときは質が下がってしまう。そんなときはなかなか依頼が続かないものだ。

 

そしてやっぱり面白くない原稿は進まない。向き不向きもあるし、僕の経験不足のせいもある。そんな依頼に対しては魅力的な原稿を返すことができないのでこちらから継続をお断りすることもあった。

 

 

教師という仕事もそうだけれど、このライティングという仕事ほど自分の経験が物をいう仕事はないんじゃないだろうか。

 

自分が経験したことなら自信を持って、魅力的に書くことができる。だけれど経験したことがないことはネットの記事の寄せ集めしかできないのだ。そんな記事を書いているとき、心が死んでいくように思う。

 

 

「頭だけを使う仕事では心が満たされず、空っぽになってしまう。」なんてことが先ほど紹介した本でも書かれているのだけれど教師の時の僕はまさにそんな感じだった。

だからその時の僕と一緒に仕事をしていた人や僕が受け持った生徒たちには申し訳ないと思う。

 

だからそんな仕事は僕はもうしたくないと思った。誰がどう言おうと楽しくて、得意なことを仕事にすべきだと思っている。

 

これが甘えだと批判されることもあるけれど、僕の選択肢の方が生きることは難しい。自分の心の声を聞かずに頭だけを使って働く人こそ甘えじゃないか。

 

 

 

 

 

7時半になるとオーナーが起きて暖炉に薪を焚べてくれた。そこでオーナーと少し会話をした。

f:id:hira-jasorede:20180915181848j:plain

 

オーナーはとても親切な人で僕に仕事を紹介してくれようとしたけれど、僕はいまはライティングが楽しくて熱中したいからと断った。このオーナーは人に無理強いをするような人ではないので安心して接することができた。

 

 

昨日聞けなかったことも少し聞くことができた。

 

まずシェアハウスのオーナーという仕事についてだ。

シェアハウスはオーストラリア人の持ち主から借りているらしく、代理大家として働いているらしい。

家賃を安く設定しているので、オーナー自身も自分の家賃を持ち主に払わなくてはならず、昼間は別の仕事をしている。

 

僕はせめてこの家で手伝えることは少しだけれど手伝おうと思った。安く停泊させてもらっている分、それくらいはしたい。

 

 

そして彼の過去のことも少し聞くことができた。地元が僕と近く、僕が知っている店のオーナーなどを8年続けて、それから海外旅行をして、それからパースで3年半過ごしているらしい。

 

彼も僕と似てノマドワーカー的な生活をしたいらしく、ネットワーキングの学校にお金を貯めて来年から通おうと思っているらしい。僕はそれはとても面白いと思った。

 

自分のことを低める発言が多くて自尊感情が低そうなところや、とても人見知りする感じが僕に似ていて好感が持てる人だと素直に思った。

 

 

 

しばらく喋った後、また僕はライティングに戻った。

 

それにしてもパースはまだまだ寒く手がかじかんでしまう。

ダーウィンの暑さを今や恋しく思う。

 

しばらくするとユキノが起きてきた。確か10時過ぎだったと思う。

彼女はブランチにトーストを焼いたので、僕は寒さを誤魔化すためにスープパスタを作ることにした。

即席の思いつきで作ってみたけれど、寒さも合間って本当に美味しくできて満足だった。

f:id:hira-jasorede:20180915181722j:plain

 

食後は衣服の洗濯を済ませて、これから一週間の食料買い出しにコールスへ向かった。

(こんな感じの美しい家や景色がパースにはいたるところにある)

f:id:hira-jasorede:20180915181907j:plain

場所が違えば売られているものの種類や値段が違う。

トマトに至っては1ドルくらいパースの方が高いように感じた。

 

ダーウィンにいた頃は買い出しのたびにトマトを買っていたけれど、こちらでは気軽に買えなさそうだ。

 

 

買い出しから戻ると、購入したホットチョコレートをユキノの分と僕の分の二つ淹れてまた作業に戻った。

 

ホットチョコレートはなんだかシナモンの味がしてあまり好みじゃなかったけれどこの味に慣れていくしかない。

 

 

その後、僕は空腹のユキノに朝作ったスープパスタを作った。

料理はもはやライティングの息抜きのようになっていたからちょうど良かった。

僕はミルクティーを淹れてまたライティングに戻ることにした。

 

 

ライティングがひと段落すると僕は一度寝入ることにした。

体がまだまだパースの寒さに慣れておらず、なんだか眠気がすごい。

 

そんなことで8時過ぎまでだらだらと過ごした後、晩御飯を作る。

f:id:hira-jasorede:20180915214125j:plain

(シェアハウスで初めてフライパンを出すの巻)

f:id:hira-jasorede:20180915214618j:plain

 

 

食後は再びライティングに戻った。

 

明日は久しぶりに観光に出かける。

今日ユキノから「フリマントルに出かけないか」と提案があったからだ。

観光地に興味がない僕が出かける気持ちになったのは、

それこそ前日に読んでいた『死ぬ瞬間の5つの後悔』に登場した場所だったからだ。

 

 

 

 

<宣伝>

10月6日に紀伊国屋電子書籍ストアにて

拙著『なぜ孤独を恐れるのか?20代の君を人間関係の疲れから開放しよう!』が発売されることになりました!

海外生活の中で考えてきた人生哲学のようなものをまとめて、

読後に人間関係の悩みから解放されるような本です。

良かったら手に取ってみてください。コメント欄から質問などもいただけます。

なぜ孤独を恐れるのか?20代の君を人間関係の疲れから開放しよう! / 森島啓/MBビジネス研究班 <電子版> - 紀伊國屋書店ウェブストア

f:id:hira-jasorede:20180915181916j:plain

【パース6日目】ダーウィンからパースまでのガソリン代を計算したの巻(計4,225km)

世界一美しく孤立した街パースは、オーストラリア一天気のいい街としても名高い、らしい。

 

らしいというのは僕が滞在している間、雨が降っていることの方が多く、その異名に若干の違和感を覚えているからだ。

 

 

そんなパース生活1日目(正確には昨日が初日だが)ももちろん雨だった。

 

朝食にコーンフレークと昨日のあまりのマンゴークリームロールを食べ、ユキノが余らせたコーンフレークも食べた。

 

洗い物やゴミ捨てなども済ませてまずは僕達の大量の荷物を車で宿まで運ぶ。

 

距離制限はあったものの、なんとか制限内でレンタカー会社と宿までの距離を収めることができそうだったからだ。

 

 

そんなわけで細心の注意を払いながら道を間違えないように道路を進む。車で走ってみるとパースはいかにも美しい。

 

スワンリバーのほとりに立つ高層ビル群やカラフルなモニュメント、歴史的な趣のある教会やミュージアムなどは街を流すだけでも目に焼きつく印象深さを持っている。

 

 

そんな街を通り過ぎ、無事に本日の宿オールドスワンバラックスに到着する。ここもおそらく古い建物を改装したものだろうという古さ、いや古めかしさが漂っている。

f:id:hira-jasorede:20180914065038j:plain

 

ピークシーズンの現在は普通に泊まれば25ドルするオールドスワンだが、airbnbで運良く一泊14ドルの値段で予約ができた。

 

 

そこで受付を済ませて荷物を預け終えると再び車に乗り込んだ。ついにレンタカー会社に車を返却しに行く時だ。

 

 

往路同様、細心の注意を払いながら無駄な距離を走らないように向かう。途中でガソリンを満たし、無事にアポロレンタカーに到着した。

 

 

借りた時とは違い、この日は僕達以外の客はおらずスムーズに返却作業は進む。

 

 

ここで一つ問題が起きた。渡したガソリンのレシートのうち一つだけ購入物、つまりガソリンを買ったという記述がないため返金されないと言われたのだ。それも限りなくエンプティに近い時に給油したサンドファイアでのレシートだった。

 

僕はしばらく抵抗を続けたが、返金が不可能なことも同時に理解していたため引き下がることにした。

(今回の旅のレシート群)

f:id:hira-jasorede:20180914061306j:plain

 

ダーウィンからパースまでのガソリン費用は$1197.34)

f:id:hira-jasorede:20180914061444j:plain

 

そんな一時があったアポロレンタカーを後にして、街に帰るためにバスに乗り込んだ。

 

 

バスで行き先を英語で伝えていると、ふいにアジア系の男性ドライバーが日本語で話しかけてきた。

 

「てか、どこいくんすか?」

「えっ、日本の方?」

「そうです、そうです。どこ行きたいの?」

「いや、この…場所…」

 

僕はグーグルマップを見せながら場所を示す。

 

「ああ、ここね。僕、最近ドライバーになったばかりだから慣れてなくてね。でも分かるよ。料金はとりあえず一人4.8ドルね。できたら二人一緒にちょうだいね。」

 

 

なかなかの早口でまくし立てられながら僕達は運賃を払いバスに乗った。ドライバーからほとばしる癖のようなものを感じながら。

 

おそらく年齢は50過ぎ。その年齢で最近になってドライバーになったという彼の境遇を酒の席でゆっくりと聞いてみたい気持ちになった。

 

 

 

そんなことは実現するわけでもなく、僕達は目的地で下車。そのまま電車に乗り継ぐ。

f:id:hira-jasorede:20180914061731j:plain

 

なんとパースではバスチケットで2ゾーンまでなら電車も同じ運賃で乗れてしまうことができる。こんなお得なサービスを知らず、僕は前回わざわざバスと電車にお金を払っていた。

 

バスがやたらと高いと思ったが、電車もついでに乗れるならむしろ安いくらいだ。

 

 

そして無事にパース駅に到着。チェックイン時間に近づいていたため、そのままオールドスワンに向かった。

 

 

チェックインを済ませて部屋に入るとなかなかカオスな空間だった。

 

六人部屋のはずが空きのベッドが一切見つからない。先に入っている3人の男女が荷物を豪快に広げて全てを使っているようだ。

 

以前、ダーウィンで僕たちとシンガポールの友人が四人部屋に三人で入居しているときに、「ここに勤勉な外国人が入ってきたら気まずいだろうなあ」と話して笑っていたが、どうやら僕たちがその立場になってしまったらしい。

 

長逗留をしているらしいエストニア人3人の部屋からは吐瀉物の香りが漂っていたため早めに外に繰り出したくなった。

 

 

その中で荷解きをして、ユキノと街を歩くことにした。まずは腹ごなしだ。

以前パースに僕が一人で滞在しているときに唯一、外出したのが日本食レストランの「たか」という店だ。オーストラリアで外食をすると2桁ドルはしそうなものだが、ここはカツ丼をラージサイズで食べても一桁ドルに収まる良心設計なので良く使った。

 

 

ここで僕は旅中、念仏のように唱えていた唐揚げを食べ、ユキノはジンジャーポーク丼(豚生姜焼き丼)を食べた。

 

 

昼食を済ませると街をぶらぶらと歩くことにした。以前気づかなかったが、ここはどうやら割とおしゃれな街らしい。

オーストラリアでは初めてユニクロやナイキなどのお店を見つけた。

 

建物もヨーロッパ感が漂うものが多い。

f:id:hira-jasorede:20180914062446j:plain

f:id:hira-jasorede:20180914062547j:plain

 

 

そんな街中にあるポストカードショップで絵葉書を購入した。祖父母用と前職場の人に向けてだ。

 

前の職場を辞める際に、一人の先生に手紙を出すと約束をしながらこれまでなかなか出す気持ちになれなかった。

去った者がそんなものを出してどうするという気持ちもあったし、出す勇気が出なかったというのも本音だ。

 

でもこのダーウィンからパースの旅中に自然と出そうという気になれた。それはようやく気持ちの上で過去を清算することができたからに他ならない。

 

あまり気持ちのいい辞め方ではなかったし、これまではどちらかというと前の職場と言えば悪い思い出が先立っていたが、なんだか最近は楽しかった思い出や嬉しかった記憶が蘇ることの方が多い。

過去を辛いもののままにしてしまっては記憶に縛られたままだ。それは何よりも精神衛生上悪いことで、捉え直していかなければならない。悪いこともあったけど、良いこともあった過去の記憶ならば良い記憶に焦点を当てれば良い。

 

そして今回手紙を書いた先生はそんな良い記憶の中に出てくる先生の一人で、間違いなく僕の過去を捉え直す上でとても大切な人だった。そんな先生に感謝の気持ちを込めて手紙を綴った。

 

手紙を書いたのも、ペンで文字を書いたのも久しぶりすぎて手が震えそうになったが何とか書ききることができた。こういうのは勢いが大切。

f:id:hira-jasorede:20180914062628j:plain

 

 

手紙は途中まで宿で、仕上げは図書館に出かけて書いた。

 

この図書館の発見も偶然だった。ユキノが女子っぽくカフェに繰り出したいと言ったのでカフェを探したが、作業ができそうな場所が全然ない。

騒がしい場所か、上品過ぎる場所かどちらかしかなく、その中間がないのだ。

 

そういうわけで寒さに足をしびらせながら歩くこと30分ほど。カフェが入店している市立図書館を発見した。

 

 

手紙を書き終えると、そのまま翌日からのシェアルーム探しを始めた。

そしてタイミングよく、これから部屋の下見をすることができることになった。

 

下見するシェアルームは一週間$85。光熱費とネット環境も込みなのでかなり安い。

その代わり市内からは電車で10分ほど乗らなくてはならず、また駅からも割と歩かねばならない立地にあった。

 

働きに出るユキノはまだしも、僕は家に引きこもるだけなので問題はない。

 

早速電車に乗り込み、家に向かう。

 

(その途中で手紙を投函。我ながら怪しい)

f:id:hira-jasorede:20180914064431j:plain

 

家は高級な住宅街の中にある割と歴史的趣を感じる一軒家だった。

早速お邪魔すると日本人オーナーが迎えてくれた。どうやら他のシェアメイトも日本人のようだ。

 

僕は衛生面はそこまで気にしないのでネット環境だけ確認して後は御構い無しだったが、オーナーは驚くべきことを言う。

 

「宿代は週$70で構いません。安く設定し過ぎると逆に人が来ないので、相場に合わせて表示しているだけです。」

 

ここに来る以前に、家賃を値切るか値切らないかでユキノと話していたがそんな必要もなかったようだ。そんなわけで僕たちは1ヶ月にしておよそ2万3千円という驚くべき安さの宿を手に入れてしまった。

 

 

 

帰りに祝勝会と称して再び市内で日本食レストランに寄る。僕はカツ丼を食べた。別に「勝つ」とかけるような寒いことをしたわけではない。

f:id:hira-jasorede:20180914062711j:plain

 

 

宿に戻ってからライティングをする気満々だったが、再び睡魔が襲ってきたためこの日は9時には就寝をした。明日から頑張ろう。

【パース5日目】ダガーヒルズ→パース(501km)

全くの偶然だがパースに到着したことでオーストラリアを一周している。

 

初めはケアンズからシドニー。これでオーストラリアの東側東西線を走ったことになる。

次にシドニーからパース。これで南側南北線制覇。

そしてケアンズからダーウィン、そして今回のパースで一気に北側南北線と西側東西線をクリアしたわけだ。

 

 

一周するぞと意気込んでラウンドトリップに出たわけでもないので感慨は特になかった。

 

 

そんなダーウィン〜パース車旅もこの日が最終日だ。

 

 

マウントマグネットから60km南下した場所にあるダガーヒルズ付近でキャンプをした僕達はこの日も午前5時に目覚める。

 

しかしあまりの寒さでなかなか布団から出ることはできない。この寒さが僕には懐かしかった。全く嬉しい懐かしさではないのだが。

 

 

車にエンジンをかけ、暖気をしながら再び布団に入り、車内が温まるのを待つ。

 

エンジンをかけ50分ほど経ってから朝食を二人揃って摂り、車をパースに向けて出発させた。

 

 

 

ダガーヒルズからの道は見所が割とあった。

 

 

最初に僕達を迎えてくれたのは規格外の菜の花畑だ。時速110kmの車から動画を撮ったが30秒ほど菜の花畑が画面を埋め尽くした。そんな畑が何十もある。

f:id:hira-jasorede:20180914054618j:plain

 

今が旬なのか景色は菜の花色。そしてこの地域の土が黄土色なので、地面はやたらと黄色が目立った。

 

 

そして二つ目の見所はいよいよパースの手前100km程になった付近にあるニューノーチャ(New Norcia)という町だ。

 

 

ここには手洗いついでに寄っただけなのだがかなり美しい町だった。

 

小さい町だが、建物全てが歴史的建造物のように、いやどの建物もどこかしらに歴史的な由来の書かれたボードが立っているのだ。

 

 

教会や鐘楼、キリスト系のカレッジなど、どこをとっても観光地になりそうな町だ。

f:id:hira-jasorede:20180914055221j:plain

 

 

ニューノーチャに行くには95号線を少し外れる必要があるが、その道にも綺麗な湖などもあり一見の価値がある。

 

 

 

手洗いを済ましたのち、居ても立っても居られなくなった僕はユキノに許可を貰い、一番気になったキリスト系のカレッジの内部をうろうろした。

f:id:hira-jasorede:20180914054557j:plain

f:id:hira-jasorede:20180914055312j:plain

軽く内部を見回り満足した僕達は引き続きパースに向かった。

 

 

パースに近づくにつれ、町同士の間隔が狭まり、規模も大きくなる。この演出が僕達をわくわくさせた。

 

 

 

そしてついにパースに入る。この日は市内には入らず、明日の車返却に備えてレンタカー会社の近くの駐車場に停めることにした。走行距離制限もあり、車で優雅に市内観光とはいかないのだ。

 

 

駐車場に停めると各々、おもいおもいに昼食を購入する。

 

僕はこんな時でもあまり贅沢ができない性質を持つため、コールスで割引になっていたマンゴークリームロールを1ドルで購入して食べた。

(口が甘々になったので、食パンの上にポテチとマヨネーズをかけた健康を害するやつも食した)

f:id:hira-jasorede:20180914055815j:plain

 

ユキノはこの旅でずっと食べたがっていたハングリージャックのハンバーガーセットを食べた。

f:id:hira-jasorede:20180914055348j:plain

 

その後も各々に時間を過ごした。僕は朝食で使用した食器を洗い、ユキノは明日のためにパッキングや車内の片付けをしてくれた。

 

 

 

そこからの僕の怠惰っぷりときたらなかった。ただただ車のベッドでごろごろし続け、ユキノにここまで書いた日記を音読し続け、時間を持て余した。

 

 

 

夕食の時間になると僕達は再びハングリージャックに向かう。

ユキノはここぞとばかりに10ドル以上する豪華なハンバーガーを食べた。

 

僕と同じぐらい経済面で困っている彼女だが「食べたいものは食べる」というスタンスはブレない。

僕も彼女を見習わなくてはならない、と思いながら粛々と「ハッピーセット」的なやつを頼んだ。

(奥の大きいのがユキノのもの、手前の小さいのが僕のもの。遠近法を使っても大きさは誤魔化せない)

f:id:hira-jasorede:20180914060042j:plain

 

 

 

店内のトイレで歯磨きまで済ませて車内に戻る。早起きをした僕はすでに睡魔との戦いが始まっていたためすぐさま寝入ってしまった。

 

その間、ユキノはクラウドソーシングの仕事をしたり、シェアルームへの連絡を取ってくれていたらしい。

 

 

さていよいよパースでの生活が始まる。明日は以前、僕が一週間ほど滞在したバックパッカー宿に停泊をして、1日でこれから滞在するシェアルームを探さねばならない。

 

そこが決まり次第、僕は再びライティング、ユキノは就活を始めることになる。

 

 

世界で最も美しく孤立した街、パースでの生活が始まろうとしている。

【パース4日目】マーブルバー→ダガーヒルズ(960km)

目が醒めると昨日眠る前に見えた星空はすっかり白んでいた。僕らの眠りを破ったのはキャンプサイトで同じく休息をとっていたトラックの出す唸るようなエンジン音だった。

 

 

 

昨日より1号線を離れ、95号線を進んでいる。レンタカー会社により距離制限のかけられた僕達には街が小刻みにあり、綺麗に整備されているであろう海沿いの1号線を通る選択肢はなかった。

 

 

1号線が海岸沿いに大回りで走る道路なら、こちらの95号線はパースまでの最短距離の内陸をかき分け進んでいくルートだ。

 

 

この道路は工事車両が手早く移動するために作られたのではないかと思うほどトラックばかりが通る。そのためレストエリアもトラックばかりが往来し、この晩は何度も巨大車両が吐き出す轟音で目が覚めた。

 

 

 

 

いつも通り5時台に目を覚まし、6時から行動を開始する。手っ取り早く互いに好みの食料を摂り、手洗いを済ませて出発した。

(朝が弱いユキノ。ハンドルを握ればタフドライバーに。)

f:id:hira-jasorede:20180913183618j:plain

 

もうパースまで1200km手前まで迫っていた。このままいけば返却日前日の12日には到着することができそうだ。

 

 

 

「外れルート」と思っていた内陸95号線だが、意外と見所も多い。

 

最初に出てきたのはラベンダーなどのむらさき色の野花の大群だ。これまで緑か茶色しか目に映らなかった僕達にとってはそれだけでも目の保養となる。思わず車を止めて写真を撮ったほどだ。

f:id:hira-jasorede:20180913183653j:plain

 

 

そして次に僕達を迎えてくれたのは広大な山並みだ。遠くから見ると通り道を完全に塞いでいるとしか思えない文字通り「山の壁」の隙間を蛇行した道路に沿って車は進む。

 

 

車は谷を通る形になるわけだが両脇に見える山の断層がいかにも美しい。

 

 

 

ひとまず最初の給油ポイントをニューマンに設定した。前回入れた地点からは410kmほど離れているため燃費も考えるとぎりぎりの距離だ。

 

 

280kmほどの距離を交代しながら進み、最後は燃料がエンプティーの線を指しているところに針が指すほど残量が少なくなったがなんとかニューマンに辿り着いた。僕達はシェルで給油を済ませた。

 

 

最近、僕達は毎日の楽しみの一つとして僕はアイスコーヒーを、ユキノはイチゴミルクを一つずつ買うという習慣があった。

 

 

そして御多分に洩れずこの日もユキノはイチゴミルクをシェルで買おうとしたが、シェルに併設されたコンビニエンスストアにはなかった。そういうわけで僕達は10km先のカプリコーンまで進み、そこのガソリンスタンドのコンビニに立ち寄ることに決めた。それが思わぬ幸運につながった。

 

 

カプリコーンのコンビニで無事イチゴミルクを購入したユキノは店員にシャワーが浴びれるかを尋ねてくれ、なんとフリーでシャワーを浴びれることになったのだ。これだけでも幸運なのだが、冷えた飲料水の補給や食器洗いも同時に済ますことができ、かなり助かった。

 

 

ここで僕も4日ぶりのシャワーを浴び、旅の垢を落とした。着替えや髭剃りも4日ぶりに行い、さっぱりすることができた。お風呂も毎日浴びれるとむしろ面倒だが、浴びれない環境にいるととてもありがたい。

 

 

このカプリコーンのガソリンスタンドはそれだけでなくフリーのWi-Fiもあったり、ソファでくつろげたり、旅人が泣いて喜ぶ設備が山ほど揃っていた。

 

 

実質ここで購入したのはユキノのイチゴミルクだけだっが、約一時間ほどカプリコーンに滞在することになった。

 

 

 

 

その遅れを取り戻すようにそこから僕達はほとんど給油以外には止まらず走り続けた。

 

カプリコーンから次の給油ポイントはクマリーナ。その他にもキュー、マウントマグネットなどなんだか可愛らしい地名が多いのもこの95号線の面白いところだ。

 

 

 

 

そういえば今がオーストラリアの乾季だと聞くが地図上に描かれる川や湖のほとんどは干からびていることに気づく。

 

このように水不足の土地だとキャンプサイトのトイレに水道が通っていることも少なく、ほとんどがボットン便所だ。

 

そんな中で改めてフリーシャワーが使えるガソリンスタンドには頭が下がる思いだ。

 

 

 

さて今日もユキノの交通運の無さが見事に発揮する。

 

クマリーナでドライバーがユキノになり、しばらく走っていたところ前方にトラクターを積んだロードトレインが走っている。

 

オーバーサイズのロードトレインは他にも飛行機の翼や普通のタイヤの100倍はありそうな大きさのタイヤなどを運んでいたりする。

 

 

これまで対向車線にオーバーサイズの積載物を乗せて走るトラックは見てきたが同一方向を走行しているのは初めて見た。

(二車線を支配するオーバーサイズロードトレイン)

f:id:hira-jasorede:20180913183956j:plain

 

そんな呑気なことを言っていたのもつかの間、僕達は約100kmの距離をこのオーバーサイズトラックの時速60キロ走行に付き合うこととなったのだ。

 

 

オーバーサイズトラックから解放されたのは次の給油地マウントマグネットの手前15kmあたりの地点だ。そこからユキノはこれまで我慢していた分の速度を存分に発揮し、すぐさま目的地に到着。

 

 

給油をしながら今日のキャンプサイトも探す。結果、この地点から60km先のフリーキャンプサイトを本日の停泊地とした。

 

 

珍しくまだ陽の名残が空をぼんやりとオレンジ色に染めている。空の色が黒くなる前になんとか停泊地へ向かいたい。そんな思いですぐさまマウントマグネットを後にした。

 

 

 

 

そういえばパースに近づくにつれ徐々に町の規模が大きくなってきていることに気づく。

 

このマウントマグネットも、一つ手前のキューも95号線が見抜き通りのように作られている。モーテルやブッチャー、スーパーマーケットなどもあり、西洋風のレトロな煉瓦造りの建物がある。完全に僕好みの町だ。

 

本来ならボトルショップで安酒を一杯買って夜の友にしたいところだけれどここは我慢しておいた。

 

f:id:hira-jasorede:20180913184114j:plain

f:id:hira-jasorede:20180913184100j:plain

 

 

結局、キャンプサイトに着いたのは陽が沈んだ午後七時。今日は1000km弱、ただひたすらに南下を続けたためかなり冷え込んでいる。パースはここからさらに500km南だというのでまだまだ寒いのだろう。

 

 

寒さに凍えながら簡単に夕食を済ませた。この日はただパンにチョコスプレッドを塗ったものを1枚食べただけだったけれど、車中泊の際はどんなものでも美味しくなるのは前述した通りだ。そして僕は日常でもこのチョコスプレッドパン一つで何日も過ごせるくらいには好きだ。

 

 

食後トイレと歯磨きを済ませすぐに就寝した。

【パース3日目】マリーリバー→マーブルバー(1270km)

この日の朝は午前5時に起きて活動を開始した。昨日のマンブローは暑過ぎて寝付けなかったが、ここマリーリバーでは緯度が下がったことにより朝はかなり冷え込んだ。

 

昨晩は車体温度のせいで車内が暑かったためパンツ一枚で寝たこともあり、前回一人でした旅を彷彿とさせる手足の冷たさだった。

 

 

朝が弱いユキノよりも先に目覚め、少し遅れて起きてきた彼女と二人で朝食を摂った。僕は豆乳増し増しのコーンフレーク、ユキノはチョコスプレッドを塗ったパンを食べた。

 

 

手洗いを済ませて車をキャンプサイトから出発させるために少しだけ進んだところで、車の後部からガシャンという音がした。何かと思えば車内キッチンの上に置いていたトマトソースのビンが後部出口の玄関部分にぶちまかれていたのだ。

 

 

キッチンに起き忘れていたため、車を走らせた衝撃でビンが落ちてしまったらしい。幸い貴重なトマトソースは三分の一程度しか出ていなかったこととビンが割れていなかったこと、そして玄関口の足場しか汚れなかった。

 

 

 

紙で拭くのも紙がもったいなく僕はこぼれたソースを手ですくい外に放り出し続けて、水で流し、元どおり綺麗にすると気を取り直して車を出発させた。

f:id:hira-jasorede:20180913182709j:plain

 

 

 

今日の目標はブルームを越えた先にある「サウスヘッドランド」。マリーリバーから約1200km弱進んだ地点にある。

 

 

 

最初に目指す給油ポイントはマリーリバーから約160km先のフィッツロイクロッシング

 

オーストラリアのハイウェイ上には主要拠点となる町までの距離が20km間隔くらいで、その町の略称とそこまでの距離が記されている。

 

例えば昨日立ち寄ったホールスクリークまで90kmなら「HC 90」と書かれた小さな看板が設置されている。車旅の運転手たちはこの看板を見ながら次の主要拠点を確認したりする。

 

もちろん主要拠点以外にも小さな町があったりするがそういう場所は大方ガソリンも高いし、コールスなどのスーパーも無い。そのためできる限り主要拠点に立ち寄って給油や買い物は済ませたい。

 

 

そしてマリーリバーの次の主要拠点として看板に示されていたのが「FC」、つまりフィッツロイクロッシングだ。

 

 

 

フィッツロイクロッシングは予想通り住宅街を抱える小規模の町となっていた。ガソリンスタンドに宿泊施設などを併設しているだけの拠点がある中では、住宅街を抱えているというだけで十分「主要拠点」なのだ。

 

 

ここで給油を済ませ、ガソリンスタンドに併設されているコールスというスーパーでパン、牛乳を補充した。火が使えずパスタが茹でられないためパンの消費がかなり早い。一昨日、出発前に購入した一斤(日本の2倍くらいの長さ)のパンはすでに三分の一になっていた。

 

 

フィッツロイクロッシングで用事を済ますとすぐに出発。次の給油地点までは約400km程度、ブルームに最接近するポイントとなる。

 

 

実はこの旅を始めるにあたりブルームに寄るものだと考えていたのだが寄れないということが前日に判明した。

 

ブルームという町は海沿いに面しており僕達が通る1号線を大きく外れる。時間あればがあれば寄ってみてもいいが4000km弱をほぼ5日で走破しなければならない僕達にそんな時間はない。ブルームのマツオブリュワリーは泣く泣く諦めることになった。

 

 

 

そういうわけで次の僕達の目標は「できるだけ早くパースに到着して、重い荷物を先に宿に置く」ということになった。

 

 

フィッツロイクロッシングから二時間半程度運転し、ドライバー交代のために降り立った場所からパースを見ると、後「2240km」とあった。

f:id:hira-jasorede:20180913182741j:plain

 

 

この日の目的地である「ポートヘッドランド」まで約700kmなので、そこまで予定通りに進められれば、今日はパースまで残り1500km程度まで距離を詰められそうだ。そうなるとパースへの早い到着も夢ではない。

 

 

 

ドライバー交代で僕からユキノに変わった。そして案の定、彼女は道路工事に引っかかっていたことに僕は笑ってしまった。

 

 

 

 

 

そういえばケアンズからシドニーシドニーからパースまでの永遠にも思える一人ドライブをどのように乗り越えたか、それは電子書籍の自動読み上げ機能を使用した「聴書」だ。

 

もちろん運転中にスマホなど見られないし、長時間のドライブでは音楽を聴くのも飽きてしまう。そんなときは聴書がかなり役に立ってくれた。

 

 

 

 

 

そしてこの日僕は久し振りにこの聴書をユキノが昼寝している間にしていた。

 

 

この日読んだのは『コンテナ物語』という本で、コンテナの歴史について書かれた特異な本だ。(コンテナの歴史について書かれた本は『コンテナ物語』以前は一冊もない)

 

 

現在は輸送手段として主要なコンテナだが、その誕生は浅くまだ一世紀も立っていない。(車の誕生を考えたら当たり前かもしれないけれど)

 

 

コンテナが輸送の主要媒体となるために邪魔になったのが「新たなものを受け入れられない安定志向の意識」で、政府の介入も含めて、この便利な箱の普及には数十年かかっているらしい。

 

 

新しいものを受け入れる時にはリスクがあるし飛びついたことによって後で泣きを見るかもしれないことを考えると仕方のないことだけれど、この安定志向というのは今も昔も変わらないもんだと思わざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

ユキノの運転は次の給油地点であるローバックまで。

 

ずっと西に向かって1号線を走ってきたが、このローバックを基点にして南に舵を切る。このローバックをさらに西に進めばブルームだが前述の通り今回は寄らない。

 

 

ローバックでの給油を終えると再び僕の運転でひたすら南下していく。相変わらず景色も変わらず特筆することはあまりない。あえていうとすればやはり僕の運転中は、舗装道路しかないということくらいか。

 

 

 

しばらく行くとサンドファイアというロードハウスに。ここで僕は一つ思いを果たすことができた。

というのはずっとボロボロの廃車とともに写真を撮りたいと思っていたのだ。

 

 

オーストラリアの大地を走っているとたまに放置されたままの事故車がそのままの形で置き去りにされていることがある。

 

横倒しのものもあれば、反転しているものもある。それとともに写真を撮りたかったのだが、なかなか運転中に停車して撮りに行くというタイミングもない。

 

そういうわけで今日の今日までその思いを秘めながら(たまに口に出しながら)いたわけだが、このサンドファイアにはなんと事故車が事故車のままでモニュメント化しているではないか。

 

そんなわけで早速、ユキノにシャッターを押してもらってご満悦になった。

f:id:hira-jasorede:20180913182840j:plain

 

ここで僕は普段なら買わない物価高のコーヒーを買い、思いを遂げたサンドファイアを後にした。

 

 

 

この日は早起きしただけあり、なんとユキノと旅に出て初めて目的地に陽が出ているうちに到着できそうな良いペースでの走行ができていた。

互いに200km未満でドライバーを交代し合い、休みなく走らせていたのも功を奏していた。

 

 

最初は車幅の広いキャンパーバンの扱いに不安げだった彼女も3日目にして法定速度を物ともしない運転をかましてくれている心強いパートナードライバーとなっている。そんな彼女の運転に安心しきった僕は枕を取り出して助手席で眠る始末だった。

f:id:hira-jasorede:20180913183334j:plain

 

 

 

サンドファイアから約三時間走行するとついに今日の目的地であるサウスヘッドランドに到着する。運転中、肉を食べたがった彼女のためにハングリージャックというハンバーガー屋を探したが残念ながらなかった。

 

 

サウスヘッドランドに着くと陽はまだ残っていた。斜陽が眩しくドライバーのユキノは運転がしづらそうだったが、僕は目的地に明るいうちに到着できたことが嬉しかった。

f:id:hira-jasorede:20180913183241j:plain

 

 

ひとまず給油に向かう。サウスヘッドランドは割と大きな町で若干郊外に出なければならなかった。

 

 

ガソリンスタンドに着くとそこで給油を済ませ、ハンバーガーの代わりにソーセージロールを買った。

f:id:hira-jasorede:20180913183304j:plain

 

僕があれこれを済ませている間にユキノに今日のキャンプサイトを調べてもらっていたが、ソーセージロールを抱えて車に戻った僕に彼女から悲報が届く。

 

 

「次のフリーキャンプサイトまで130kmあるよ」

 

 

 

おそらく有料キャンプサイトであればもう少しあるだろうが、僕は頑なにフリーキャンプサイトにこだわっていた。そのため停泊できる場所は必然と少なくなってくるのだ。

 

 

 

そんなわけで陽が沈みゆくサウスヘッドランドを後にして南へ130kmの行軍を決行することになる。

 

 

 

夜間ドライブの何が嫌かといえば夜行性の客人が場所によっては無数の目を光らせてこちらに飛び出してくるということだ。もうかれこれ3匹は殺めている僕にとってこれ以上の犠牲物は出したくなかった。

 

 

そういうわけで同方面に向かうロードトレインの後ろに張り付き130kmを走りきった。結局、到着時間は午後八時を過ぎてしまった。

 

 

 

休憩もそこそこに僕達は夕食の準備に取り掛かる。先程買ったソーセージロールと傷みかけているレタス、トマトで簡単に済ました。三日ぶりの肉は確かに美味しかった。

f:id:hira-jasorede:20180913183324j:plain

 

 

 

 

その後、僕はまた失態を犯す。彼女の大切にしていたガラスのコップを落として割ってしまったのだ。

 

 

僕達は食後にトイレへと洗い物に向かった。そこで僕はまな板の上に物を置いて運んだのだが積載量が完全にオーバーしてしまっていた。

 

トイレに着いた直後、僕は気が緩んだのかその場にコップやフォークといった物をぶちまけてしまったのだ。

 

 

平謝りはしたが割ってしまったものはもう直せない。それにこのコップは彼女の手作り、唯一無二の存在だったのだ。

 

 

 

ユキノは全く気にしていないような顔で僕に接してくれていたが内実はそんなわけがないだろうと思う。

 

 

 

 

この日はそんなこともあいまりもやもやとなかなか眠れない夜を過ごした。ただやたらと星だけが綺麗だった。

【パース2日目】マンブロー→マリーリバー(1047km)

この日は前日のユキノとの取り決め通り朝5時に起きた。陽が落ちると道路に夜行性動物であるワラビーが沢山出てきて危険だから早めの出発をする予定だったのだ。

 

 

 

しかし5時に目覚めると車から満点の星空が見える暗さ。結局、僕達は6時半から行動開始した。

 

 

 

 


今日のゴールはブルームである。事前情報によるとここはオーストラリアのリゾート地に当たると聞く。

 


リッチなオーストラリアンはブルームに来るとヘリコプターをチャーターして入江付近の島々を回って余暇を過ごすらしい。

 

 

(ドライバー交代地点のビクトリアリバー。美しい川がある。)

f:id:hira-jasorede:20180910075121j:image

(ビクトリアリバーのロードハウス。オーナーシップの文字の上にワイフと貼り直されている。主人がなくなって妻が代わりに切り盛りしているのかと邪推してしまう)
f:id:hira-jasorede:20180910075235j:image

 

 


そして本日はそのブルームに着く前に越境も予定している。ダーウィンのあるノーザンテリトリー州から西オーストラリア州への州越えだ。

 

 

 

州越えといえばシドニーからパースへ行った際の苦い思い出が蘇る。

 

 

 

二州の間には検問があり、そこでなけなしのリンゴをペスト対策で持っていかれてしまったのだ。

 


オーストラリアでは州をまたいで野菜や果物などを移送することは個人でも許されていない。

 

 

 

そんな検閲があるなどとは知らず、何の目的かも知らない検閲で素直に「リンゴを持っている」と答えて取りあげられてしまった僕はその後食料に難儀した。

 

 

 

そんなこともあり今回は西オーストラリア州一つ手前のレストエリアであるティンバークリークで給油と「財宝隠し」に勤しむことに。

 


六日間の食事を基本的にパン、果物、野菜に依拠している僕達がそれらを奪われてしまったらもはや食べるものはコーンフレークかチョコスプレッドを塗ったパンかグミかポテチしかない。いや、これも悪くはないかもしれない。

 

 

 

僕らのキャンパーバンには驚くほどに野菜や果物を隠してしまえる棚があったのでそこには難儀しなかった。

 

 

 

僕が財産隠しをしている間にユキノはシャワーを浴びにいった。昨晩はかなり暑く(それは車体温度のせいなのだが)大量に汗をかいたのだ。

 

 

 

ティンバークリークではシャワーを浴びるのには4ドルが必要だった。彼女は汗っぽさに我慢できずシャワーを浴びたが、同じだけ汗をかいたはずの僕は金を出すくらいなら全然浴びなくていいと思ったので浴びなかった。

 

 

 

こう書くとどう考えても僕が汚いやつのように思われそうだけれど、その通り汚いやつだ。一応、顔は手洗いのたびに洗っている。

 

 

 

 

 

 

無事、車内に財宝を隠し終え、昨晩の食器類もまとめて洗ってしまうと丁度ユキノもシャワーから帰っていたので僕達は再び車を発進させた。

 

 

 

州越え20km手前ぐらいでユキノがこんな提案をした。

 


「まっすぐの道路の中央線の上に座って写真を撮りたい」

 

 

 

その提案自体は面白いし、僕もやりたかったがそんな丁度よくまっすぐの道路で停車できる場所なんかなかなかない。と思った直後に「まっすぐの道路で真隣に駐車スペース」がある場所があったので急遽刊行した。

 

 

 

 

 

 

写真を撮っていると遠くから車の気配が。急いで駐車スペースに戻って再び車を西オーストラリア州に向けて走らせ始めた。

 

 

 

 


写真ポイントから20km行ったところでついに二州の間に鎮座する検問所。手前の看板には「ウェルカム サウスオーストラリア」と大きく書かれているが、何も知らない旅人達はここで財産を剥ぎ取られていくのだ。

 

 

 

僕はゆっくりと停車線の前で車を止めた。緊張の一瞬。髭を生やした小太りの男がフランクに声を掛けてくる。

 

 

 

「ハイ!野菜や果物は持ってるか?」

「い、いや持ってないよ」

「ほう…じゃあ車ん中チェックさせてくれよ!」

「ああ、いいぜ。乗ってくれ」

 


男は軽快に車に乗ると、運転席裏の居住スペースに一瞥をくれた。僕は先程財産を抜いておいた冷蔵庫の位置を示し、男にチェックさせた。

 


「オーケー。何も持ってねえんだな、お前ら。」

「ま、まあな」

 


ダーウィンから来たのか?ここからは時差がうまれるからな!ハバナイスデイ!」

「ありがとう!サンキュー!」

 

 

 

そういうわけで僕達は無事に隠し財産のありかを悟られずに野菜や果物を死守することができた。

 

 

 

そしてもう一ついい知らせが。時差が一時間半巻き戻ったのだ。これはできるだけ明るい時間に運転したい僕達にとってはありがたい。

 

 

 

二つの意味で得した気分になった僕達は無事、西オーストラリア州に入ることができたのだ!

 

 

 

 


州も超えたので次の目的地を西オーストラリア州最初に通過する街である「カナヌラ」に設定。それまではひたすら運転を続けた。

 

 

 

州の線など人間が勝手に書いた大地の上の落書きに過ぎないと知っているものの、州を超えるとなんだか景色が変わった気がする。

 


荒々しい大地、アウトバックのイメージがあるノーザンテリトリーと比べると水々しさと緑がある景色が西オーストラリア州には漂っている。

 


ノーザンテリトリーでは見なかった美しい黄色の花などが州を超えてからちらほらと見え始めた。

 

 

 

 


検問所から約50km、僕達カナヌラに到着した。名前の感じからするとアボリジニ由来の土地名だ。

 


予想よりも大きな町で、美しい湖にはゆったりとボートが浮いている。公園では鳥たちが追いかけあいをし、白い屋根の家が軒を連ねる。どうやらこの町はリゾート地ではないか。

 

 

 

そこで再び給油をする。カナヌラのガソリン代は$1.46と、ここらでは最も安い。ちなみに前回の給油ポイントティンバークリークは$1.76と30¢も違う。日本でいえば24円も安い計算になる。

 

 

 

給油を済ませると同じタイミングで給油をしている感じのオーストラリアンが僕達の車の下を指差しながら話しかけて来た。

 


「おい!あんたらの車の下から液体が漏れてんぞ!」

「なに!それは本当か?!」

 


それを急いでチェックした結果、クーラーの水だった。

 


前回の旅から非常に車の故障に敏感になっている僕は気が気ではなかったが、早とちりのオーストラリアンのお茶目さに免じて忘れておいた。

 

 

 

 


給油をした後、僕はアイスコーヒー、ユキノはストロベリーミルクを各々買い、チョコパンとリンゴをそれぞれ手にすると再び車を出発させた。

 

 

 

カナヌラの町から出ようとするその刹那、車の前に巨大な飛行機の影が映った。そして直後、セスナ機が僕達の車を上空から追い抜いて行った。その景色はまるでアニメのようでなんだか忘れられない光景となった。

 

 

 

 


カナヌラは付近に美しい川もあり、とても美しい町だ。ハービーベイで世話になったクリスとケンからは、クロコダイルの恐ろしさについて散々語られた通り、確かにワニも沢山いそうな土地でもある。

 

 

 

だがやはりその美しい景観は素晴らしく、カナヌラの町がおそらく退職後などに移り住むのに適していそうな町であることは間違いがなかった。

 

 

 

 

 

 

 


カナヌラからはユキノが本日二度目のドライバーを務める。彼女は基本的に強運の持ち主なのだが、なぜか道路運はついていない。

 

 

 

彼女が運転をするとだいたい工事中または交通量の少なさから未舗装になっている道路に巡り合う。一方で僕は悪路27号線以来ほとんど舗装道路を走れていた。

 

 

 

そんなわけで彼女はカナヌラ以降数時間に渡り、未舗装道路と舗装道路が混在する1号線での走行を強いられることとなった。

 

(お茶目な交通規制人)

f:id:hira-jasorede:20180910075328j:image

 

 


そして未舗装道路をクリアするとウィンダムという古い町にたどり着く。

 

(大きなクロコダイル像がお出迎え。この辺りには大きなワニが沢山生息しているのかも。)

f:id:hira-jasorede:20180910075516j:image


ここはエアポートもあれば港も小さいながらある。僕好みの「昔炭鉱などの資源で栄えたけれど、今は寂れてしまっている町」的雰囲気を持っている。

 

 

 

その町を通り抜けていくと干からびた川が道路の両端に現れる。それも道路の間近まで迫っている川の跡がある。今は歓喜だから水がないが、これは雨季になれば道路も水で溢れるのではないか。

 

 

 

ふとユキノがつぶやく。

 


「この道まっすぐでいいの?」

 


「ああ、ここはまっすぐだろう…。一応地図を見てみるが…。」

 


グーグルマップを開くと僕達は走っているはずの1号線から大きく外れていることに気づく。どうやらカナヌラを少し過ぎたところから道を間違ってしまっていたようだ。

 

 

 

1号線といえば主要道路。基本的に太い道を通っていればそれで迷わないはずなのだがどうやら同程度の太さのある分岐点があったようだ。

 

 

 

そこで僕達は急ぎ引き返すことにする。幸運なことに時差のお陰で失った時間はチャラになりそうなのと、ガソリン代は会社持ちだ。そんなわけで僕達は来た道を引き返した。

 

 

 

 

 

 

往路よりも復路の方が短く感じるのは旅の常。行く時に難儀した未舗装道路も気持ち的には割と早く通過して1号線のグレードノーザンロードに復帰した。

 

 

 

この本来走るべき1号線と僕達が間違えた道が交わる部分はT字路になっている。そして横線が1号線と間違えた道。縦線が1号線の続き。つまり1号線上を走るならばこのT字路で直角に曲がる必要があったのだ。しかも案内標識もかなりわかりづらい。これは間違えても仕方がない。と僕達は納得しておいた。

 

 

 

 


まず目指したのは給油地点であるドーンドーン。ここらの地名はアボリジニ文化由来のものが多く面白い。

 


ドーンドーンで手早く給油を済ませると時間を惜しんで再び出発した。

 

(ドーンドーンは文字通り「DOON DOON」)

f:id:hira-jasorede:20180910075711j:image

 

 


今日ブルームを目指す予定だったがどうやら厳しそうだということをこの辺りで悟りだした。もう午後3時だというのにまだブルームまでは1000km近くあるのだ。

 


そして僕は気づいた。いくら西オーストラリア州に移り時差が発生したといえどそれは人間の勝手な線引き。経度的にはほとんどノーザンテリトリー州と変わらない。つまり日照時間はほとんど変わらないのだ。時間だけをみると昨日よりも一時間半早いのだが、その分太陽の沈みも早い。昨日の日没が7時前だったから、今日のタイムリミットは6時くらいに考えるべきだろう。

 

 

 

 


ドーンドーンから240km進むとここらでは割と大きなホールクリークという町に到着する。ここで再び給油を済ます。

 


このホールクリーク、面白いことにガソリンスタンドには店員一人を除いてアボリジニしかいない。町にもアボリジニしかいない。オーストラリアの大地は中心に近づくほどアボリジニが多くなってくるのだ。

 

 

 

古くからありそうな町の佇まいにうずうずとしてしまうが、刻々と沈む夕陽に急かされて僕達はすぐに車を出した。ちなみにこの時点で6時前。まだ太陽は若干残っている。

 

 

 

 


ホールクリークから出ると僕達は今日のゴール地点をこのホールクリークから120km先のマリーリバーにあるフリーキャンプサイトに決めた。到着予定時刻は7時過ぎ。陽が落ち始めているのでここからは慎重に運転せねばなるまい。

 

 

 

 

 

 

ホールスクリークから真っ暗な道路を走らせること30分、ワラビーが左から飛び出してきた。僕はとっさに避けたが「ゴン」と鈍い音が響いた。

そしてユキノが言った。「ヒラ!左側のガスボンベの扉が開いてる!」

 


ワラビーが衝突したことでどうやらガスボンベ室の扉が開いてしまったらしい。風で扉はぶらぶらとはためいているらしい。

 

 

 

 


直近のパーキングに車を停めるとおそるおそる扉付近をチェックする。ワラビーの痕跡はなく、扉がただ開いているに過ぎなかった。僕らは胸を撫で下ろし、再びマリーリバーに進んだ。

 

 

 

 


到着時間は予定通り午後七時過ぎ。実は昨晩、ガスコンロを使い、ガス探知機がなってしまった。時間が遅いこともあいまりこの日は火を使わずに野菜とパンだけを食べることにした。車中泊生活になると冷たい水を飲み、新鮮な野菜を口に入れられるだけで至高の贅沢に感じるものだ。

 

(ケータイライトの上にペットボトルを置けば即席ランタンになる。非常時の知恵)

f:id:hira-jasorede:20180910074144j:image

 

 


食後、僕は一人で夜空を見に外に出た。こんなにも汗をかいているというのに虫が一匹も寄ってこない。気温も快適で居心地がいい。しばらくこの180度のパノラマを堪能した。高い建物がないので顔を上に向けなくても星が山ほど見えるのだ。

 

 

 

この日はその後すぐに就寝をした。明日こそはブルームにたどり着きたい。

f:id:hira-jasorede:20180910075733j:image

 

 

西オーストラリア州に入ってからやたら見るぶっとい木。ユキノいわくバオバブ

f:id:hira-jasorede:20180910075823j:image