じゃそれで(Up to you)

オーストラリアで旅をしながらお仕事をする生き方を実践しています。

【パース2日目】マンブロー→マリーリバー(1047km)

この日は前日のユキノとの取り決め通り朝5時に起きた。陽が落ちると道路に夜行性動物であるワラビーが沢山出てきて危険だから早めの出発をする予定だったのだ。

 

 

 

しかし5時に目覚めると車から満点の星空が見える暗さ。結局、僕達は6時半から行動開始した。

 

 

 

 


今日のゴールはブルームである。事前情報によるとここはオーストラリアのリゾート地に当たると聞く。

 


リッチなオーストラリアンはブルームに来るとヘリコプターをチャーターして入江付近の島々を回って余暇を過ごすらしい。

 

 

(ドライバー交代地点のビクトリアリバー。美しい川がある。)

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(ビクトリアリバーのロードハウス。オーナーシップの文字の上にワイフと貼り直されている。主人がなくなって妻が代わりに切り盛りしているのかと邪推してしまう)
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そして本日はそのブルームに着く前に越境も予定している。ダーウィンのあるノーザンテリトリー州から西オーストラリア州への州越えだ。

 

 

 

州越えといえばシドニーからパースへ行った際の苦い思い出が蘇る。

 

 

 

二州の間には検問があり、そこでなけなしのリンゴをペスト対策で持っていかれてしまったのだ。

 


オーストラリアでは州をまたいで野菜や果物などを移送することは個人でも許されていない。

 

 

 

そんな検閲があるなどとは知らず、何の目的かも知らない検閲で素直に「リンゴを持っている」と答えて取りあげられてしまった僕はその後食料に難儀した。

 

 

 

そんなこともあり今回は西オーストラリア州一つ手前のレストエリアであるティンバークリークで給油と「財宝隠し」に勤しむことに。

 


六日間の食事を基本的にパン、果物、野菜に依拠している僕達がそれらを奪われてしまったらもはや食べるものはコーンフレークかチョコスプレッドを塗ったパンかグミかポテチしかない。いや、これも悪くはないかもしれない。

 

 

 

僕らのキャンパーバンには驚くほどに野菜や果物を隠してしまえる棚があったのでそこには難儀しなかった。

 

 

 

僕が財産隠しをしている間にユキノはシャワーを浴びにいった。昨晩はかなり暑く(それは車体温度のせいなのだが)大量に汗をかいたのだ。

 

 

 

ティンバークリークではシャワーを浴びるのには4ドルが必要だった。彼女は汗っぽさに我慢できずシャワーを浴びたが、同じだけ汗をかいたはずの僕は金を出すくらいなら全然浴びなくていいと思ったので浴びなかった。

 

 

 

こう書くとどう考えても僕が汚いやつのように思われそうだけれど、その通り汚いやつだ。一応、顔は手洗いのたびに洗っている。

 

 

 

 

 

 

無事、車内に財宝を隠し終え、昨晩の食器類もまとめて洗ってしまうと丁度ユキノもシャワーから帰っていたので僕達は再び車を発進させた。

 

 

 

州越え20km手前ぐらいでユキノがこんな提案をした。

 


「まっすぐの道路の中央線の上に座って写真を撮りたい」

 

 

 

その提案自体は面白いし、僕もやりたかったがそんな丁度よくまっすぐの道路で停車できる場所なんかなかなかない。と思った直後に「まっすぐの道路で真隣に駐車スペース」がある場所があったので急遽刊行した。

 

 

 

 

 

 

写真を撮っていると遠くから車の気配が。急いで駐車スペースに戻って再び車を西オーストラリア州に向けて走らせ始めた。

 

 

 

 


写真ポイントから20km行ったところでついに二州の間に鎮座する検問所。手前の看板には「ウェルカム サウスオーストラリア」と大きく書かれているが、何も知らない旅人達はここで財産を剥ぎ取られていくのだ。

 

 

 

僕はゆっくりと停車線の前で車を止めた。緊張の一瞬。髭を生やした小太りの男がフランクに声を掛けてくる。

 

 

 

「ハイ!野菜や果物は持ってるか?」

「い、いや持ってないよ」

「ほう…じゃあ車ん中チェックさせてくれよ!」

「ああ、いいぜ。乗ってくれ」

 


男は軽快に車に乗ると、運転席裏の居住スペースに一瞥をくれた。僕は先程財産を抜いておいた冷蔵庫の位置を示し、男にチェックさせた。

 


「オーケー。何も持ってねえんだな、お前ら。」

「ま、まあな」

 


ダーウィンから来たのか?ここからは時差がうまれるからな!ハバナイスデイ!」

「ありがとう!サンキュー!」

 

 

 

そういうわけで僕達は無事に隠し財産のありかを悟られずに野菜や果物を死守することができた。

 

 

 

そしてもう一ついい知らせが。時差が一時間半巻き戻ったのだ。これはできるだけ明るい時間に運転したい僕達にとってはありがたい。

 

 

 

二つの意味で得した気分になった僕達は無事、西オーストラリア州に入ることができたのだ!

 

 

 

 


州も超えたので次の目的地を西オーストラリア州最初に通過する街である「カナヌラ」に設定。それまではひたすら運転を続けた。

 

 

 

州の線など人間が勝手に書いた大地の上の落書きに過ぎないと知っているものの、州を超えるとなんだか景色が変わった気がする。

 


荒々しい大地、アウトバックのイメージがあるノーザンテリトリーと比べると水々しさと緑がある景色が西オーストラリア州には漂っている。

 


ノーザンテリトリーでは見なかった美しい黄色の花などが州を超えてからちらほらと見え始めた。

 

 

 

 


検問所から約50km、僕達カナヌラに到着した。名前の感じからするとアボリジニ由来の土地名だ。

 


予想よりも大きな町で、美しい湖にはゆったりとボートが浮いている。公園では鳥たちが追いかけあいをし、白い屋根の家が軒を連ねる。どうやらこの町はリゾート地ではないか。

 

 

 

そこで再び給油をする。カナヌラのガソリン代は$1.46と、ここらでは最も安い。ちなみに前回の給油ポイントティンバークリークは$1.76と30¢も違う。日本でいえば24円も安い計算になる。

 

 

 

給油を済ませると同じタイミングで給油をしている感じのオーストラリアンが僕達の車の下を指差しながら話しかけて来た。

 


「おい!あんたらの車の下から液体が漏れてんぞ!」

「なに!それは本当か?!」

 


それを急いでチェックした結果、クーラーの水だった。

 


前回の旅から非常に車の故障に敏感になっている僕は気が気ではなかったが、早とちりのオーストラリアンのお茶目さに免じて忘れておいた。

 

 

 

 


給油をした後、僕はアイスコーヒー、ユキノはストロベリーミルクを各々買い、チョコパンとリンゴをそれぞれ手にすると再び車を出発させた。

 

 

 

カナヌラの町から出ようとするその刹那、車の前に巨大な飛行機の影が映った。そして直後、セスナ機が僕達の車を上空から追い抜いて行った。その景色はまるでアニメのようでなんだか忘れられない光景となった。

 

 

 

 


カナヌラは付近に美しい川もあり、とても美しい町だ。ハービーベイで世話になったクリスとケンからは、クロコダイルの恐ろしさについて散々語られた通り、確かにワニも沢山いそうな土地でもある。

 

 

 

だがやはりその美しい景観は素晴らしく、カナヌラの町がおそらく退職後などに移り住むのに適していそうな町であることは間違いがなかった。

 

 

 

 

 

 

 


カナヌラからはユキノが本日二度目のドライバーを務める。彼女は基本的に強運の持ち主なのだが、なぜか道路運はついていない。

 

 

 

彼女が運転をするとだいたい工事中または交通量の少なさから未舗装になっている道路に巡り合う。一方で僕は悪路27号線以来ほとんど舗装道路を走れていた。

 

 

 

そんなわけで彼女はカナヌラ以降数時間に渡り、未舗装道路と舗装道路が混在する1号線での走行を強いられることとなった。

 

(お茶目な交通規制人)

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そして未舗装道路をクリアするとウィンダムという古い町にたどり着く。

 

(大きなクロコダイル像がお出迎え。この辺りには大きなワニが沢山生息しているのかも。)

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ここはエアポートもあれば港も小さいながらある。僕好みの「昔炭鉱などの資源で栄えたけれど、今は寂れてしまっている町」的雰囲気を持っている。

 

 

 

その町を通り抜けていくと干からびた川が道路の両端に現れる。それも道路の間近まで迫っている川の跡がある。今は歓喜だから水がないが、これは雨季になれば道路も水で溢れるのではないか。

 

 

 

ふとユキノがつぶやく。

 


「この道まっすぐでいいの?」

 


「ああ、ここはまっすぐだろう…。一応地図を見てみるが…。」

 


グーグルマップを開くと僕達は走っているはずの1号線から大きく外れていることに気づく。どうやらカナヌラを少し過ぎたところから道を間違ってしまっていたようだ。

 

 

 

1号線といえば主要道路。基本的に太い道を通っていればそれで迷わないはずなのだがどうやら同程度の太さのある分岐点があったようだ。

 

 

 

そこで僕達は急ぎ引き返すことにする。幸運なことに時差のお陰で失った時間はチャラになりそうなのと、ガソリン代は会社持ちだ。そんなわけで僕達は来た道を引き返した。

 

 

 

 

 

 

往路よりも復路の方が短く感じるのは旅の常。行く時に難儀した未舗装道路も気持ち的には割と早く通過して1号線のグレードノーザンロードに復帰した。

 

 

 

この本来走るべき1号線と僕達が間違えた道が交わる部分はT字路になっている。そして横線が1号線と間違えた道。縦線が1号線の続き。つまり1号線上を走るならばこのT字路で直角に曲がる必要があったのだ。しかも案内標識もかなりわかりづらい。これは間違えても仕方がない。と僕達は納得しておいた。

 

 

 

 


まず目指したのは給油地点であるドーンドーン。ここらの地名はアボリジニ文化由来のものが多く面白い。

 


ドーンドーンで手早く給油を済ませると時間を惜しんで再び出発した。

 

(ドーンドーンは文字通り「DOON DOON」)

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今日ブルームを目指す予定だったがどうやら厳しそうだということをこの辺りで悟りだした。もう午後3時だというのにまだブルームまでは1000km近くあるのだ。

 


そして僕は気づいた。いくら西オーストラリア州に移り時差が発生したといえどそれは人間の勝手な線引き。経度的にはほとんどノーザンテリトリー州と変わらない。つまり日照時間はほとんど変わらないのだ。時間だけをみると昨日よりも一時間半早いのだが、その分太陽の沈みも早い。昨日の日没が7時前だったから、今日のタイムリミットは6時くらいに考えるべきだろう。

 

 

 

 


ドーンドーンから240km進むとここらでは割と大きなホールクリークという町に到着する。ここで再び給油を済ます。

 


このホールクリーク、面白いことにガソリンスタンドには店員一人を除いてアボリジニしかいない。町にもアボリジニしかいない。オーストラリアの大地は中心に近づくほどアボリジニが多くなってくるのだ。

 

 

 

古くからありそうな町の佇まいにうずうずとしてしまうが、刻々と沈む夕陽に急かされて僕達はすぐに車を出した。ちなみにこの時点で6時前。まだ太陽は若干残っている。

 

 

 

 


ホールクリークから出ると僕達は今日のゴール地点をこのホールクリークから120km先のマリーリバーにあるフリーキャンプサイトに決めた。到着予定時刻は7時過ぎ。陽が落ち始めているのでここからは慎重に運転せねばなるまい。

 

 

 

 

 

 

ホールスクリークから真っ暗な道路を走らせること30分、ワラビーが左から飛び出してきた。僕はとっさに避けたが「ゴン」と鈍い音が響いた。

そしてユキノが言った。「ヒラ!左側のガスボンベの扉が開いてる!」

 


ワラビーが衝突したことでどうやらガスボンベ室の扉が開いてしまったらしい。風で扉はぶらぶらとはためいているらしい。

 

 

 

 


直近のパーキングに車を停めるとおそるおそる扉付近をチェックする。ワラビーの痕跡はなく、扉がただ開いているに過ぎなかった。僕らは胸を撫で下ろし、再びマリーリバーに進んだ。

 

 

 

 


到着時間は予定通り午後七時過ぎ。実は昨晩、ガスコンロを使い、ガス探知機がなってしまった。時間が遅いこともあいまりこの日は火を使わずに野菜とパンだけを食べることにした。車中泊生活になると冷たい水を飲み、新鮮な野菜を口に入れられるだけで至高の贅沢に感じるものだ。

 

(ケータイライトの上にペットボトルを置けば即席ランタンになる。非常時の知恵)

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食後、僕は一人で夜空を見に外に出た。こんなにも汗をかいているというのに虫が一匹も寄ってこない。気温も快適で居心地がいい。しばらくこの180度のパノラマを堪能した。高い建物がないので顔を上に向けなくても星が山ほど見えるのだ。

 

 

 

この日はその後すぐに就寝をした。明日こそはブルームにたどり着きたい。

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西オーストラリア州に入ってからやたら見るぶっとい木。ユキノいわくバオバブ

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