じゃそれで(Up to you)

オーストラリアで旅をしながらお仕事をする生き方を実践しています。

一億ドルと奇行

事件は午前最後の授業で起こった。

英語の指示書に従って街を練り歩きながらクイズを解いて行くというグループ校外活動なのだが、何よりこのグループの噛み合いが非常にまずかった。どれぐらいマズかったかと言うと、開始1分でグループがバラけるぐらいには相性が悪すぎたのだ。

 

グイグイと進んで行く女子二人に対し、完全に遅れを取る男性陣と言う二つに分かれてしまった。思春期の中学生でももう少しチームワークを大切にしそうなものだ。僕は彼女達のあまりのスタンドプレイとマイペース具合に苛立ち、勝手に教室に帰ってしまったのだ。今思えば何も言わずに帰るという卑怯なやり方を取った自分は腹立たしいが、過ぎてしまった事は仕方がない。

 

 

一人で予定時間よりも早く教室に戻った僕に対して、担当教員のロジャースは目を白黒させていた。当然のことである。

僕はロジャースに丁寧にことの経緯を説明し、自分の非を謝りつつ、昼からの授業に出席することで勘弁をしてもらうように頼んだ。ロジャースは、この餓鬼のようなこの26歳の男に相当呆れたと思うが、そんな事は表情にも出さず僕の願いを許可してくれた。

 

 

 

僕は未だ収まらない苛立ちを何とか昼までに終結させるため、というかそれを理由にして酒屋でビールを購入した。ちなみに普段は割と値が張るため酒の類は購入しない。コロナの中瓶ですら4.5ドルもするからだ。こういう時に酒に酔いやすい体質で本当に良かったとつくづく思うのであった。

 

 

 

さてビールを買い、つまみは昼食のサンドウィッチに置き換えるとしてどこに向かうか。その最適解は太陽光の差す海沿いしかないだろう。僕は買ったビールがぬるくならないように早足でシーサイドに向かった。

 

海沿いに着くと近くの芝生で地元のオーストラリアン達がゆったりとしている。平日にも関わらず呑気に体を焼いているものすらいる。日本ではなかなか見られない光景だろう。

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多少日差しが暑いものの潮風が気持ちよく、1、2時間ほどいるのにはむしろ丁度良さそうだ。僕は適当に開いているベンチに腰掛けおもむろにビール缶を開ける。一口含んではサンドウィッチを齧る。そして無心になるように徹する。こんなことを20分ほど続けているうちに随分気持ちが落ち着いてきた。

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気持ちが落ち着くと改めて自分の稚拙な行動を見直す。例え相手の行動が勝手であったとしても、黙って出て行くのは行けなかった。僕はこうやって堪え難い場所から突発的に逃走する悪癖があるのだ。そういえば前職で退職届を初めて出した時も、朝の6時ぐらいに誰もいない職場に行って、管理職の机に置いて出て行ったのを思い出した。

一言断りを入れるのと、何も言わないのでは、行動の表面は同じでも後味が変わってくる。そういう意味では次からの反省としなければならない。

それにロジャースにも申し訳なかった。せっかく準備をしてもらった授業内容をないがしろにされて嫌な気持ちがしない教師がいないわけがない。それは自分とてよく分かっているはずだ。ロジャースには断りを入れたのでそこまでの後味の悪さはなかったものの、彼の優しさに甘えてしまったことについては反省したい。

 

 

一通り自分の奇行について整理整頓して、後はただただ海沿いでの酒盛りを楽しむことにした。類は友を呼ぶ、と言えばいいのか途中で変なおばさん二人組が僕に「一億ドル札」を渡してきた。よく読むと、お札状の宗教関連のチラシだったようだ。宗教と金、切っても切れない関係を体現した札チラシを作成したこの宗教は、もしかすると最も真理に近い宗教なのかもしれない。

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酒が無くなるとやることもなく、午後の授業まで時間もあったので寝そべりながら読書をした。ちなみに酒と本は最も相性の良いものの一つだと僕は考えている。ちなみに本の種類は何でもいい。哲学書でも自己啓発書でも歴史書でも小説でも何でもだ。ちなみに僕は酩酊しながら『ソクラテスの弁明』を読破し号泣した過去を持つ。翌朝にはすっかり頭から抜けていて、なぜ号泣するまでに至ったかは分からなかったが。

残念ながらこの日は飲酒量が少なく本の世界にトリップする事はできなかったが、少なくとも内容を頭の中に押し込むための円滑剤としての役割は果たしてくれたようだ。

 

 

 

午後の授業もそろそろ始まるという時間に僕は戻るかどうかを迷い始めたが、義務教育でもあるまいし、自分の意思で来た学校を怠ける意味もなかったので気持ちを切り替えて参加することにした。と言っても午後の授業は、明日のプレゼンの準備時間に完全に当てられてしまい、もうすでに準備が終わっている僕とペアのユウタは雑談をひとしきりして終わってしまった。

 

 

 

放課後はカフェテリアで学校から追い出される時間までパソコンを叩き、それでも時間が足りなかったので学校外のWi-Fiが届く範囲で日記を書ききった。

 

その後もしばらく家に帰ろうという気にならなかったので、仕方なく海沿いで読書の続きをすることにした。ちなみにもう酒は抜けている。肌寒くなるまで読書を続けたところで僕はバスに乗って帰ることにした。目の前でバスを見逃してしまったために1時間待つことになってしまった。

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この日はいつもより帰りが遅くなったのでジョセフィーナが心配して、カジノに行かずに待っていてくれていた。僕は彼女に事前に連絡をしておけばよかったと素直に反省した。その代わり彼女は僕の帰宅を見届けてすぐにカジノに行ってしまったが。

 

 

食後はいつものように読書をしていた。今は『珍夜特急』という、タイトルでいると沢木耕太郎の『深夜特急』のオマージュのような本を読んでいる。この本も今はシーズン2に至り、それももうすぐで読み終わってしまう。佳境にさし当り考えた事はまた書評として書きたいと思う。