じゃそれで(Up to you)

オーストラリアで旅をしながらお仕事をする生き方を実践しています。

【2日目】タウンズビル→サリーナ

【朝食】レーズンパン、りんご、コーヒー

【昼食】パスタ(ツナマヨソース)

【夜食】ビール2杯(GREAT NORTHERN BREWING, XXXX BITTER)、チキンパルメジャーナ

 

※この日記は現在進行形で書かれているため結末はない。

 

あまりの寒さで夜中に何度も目が覚めた。昼間は半袖半ズボンで十分だが、朝夕は相当冷え込むらしい。忘れていたがオーストラリアは今冬季に入っているのだ。

 

 

 

7時過ぎに動き出しを開始した。コンロで湯を沸かしコーヒーを淹れる。レーズンパンとりんごを食べて車を出発させた。

 

 

 

一応、今日の目的地はここから730kmほど離れたロックハンプトンを設定した。早朝の出発だったので休み休みでも日が沈むまでには辿り着けるだろうという目算だ。出発前にパスタを水に浸して、車を出発させた。あらかじめ水に浸しておくことで劇的に茹で時間が減らせ、その結果、ガスの節約に繋がるのだ。

 

 

 

 


国道1号線は相変わらず車通りが少なく快適である。気持ちの良い快晴も手伝ってかこの日の運転は好調だった。そう「DEADMAN CREEK(死人の池)」を通り過ぎるまでは。

 

 

 

 

 

 

1時間半に一度ぐらいの頻度で休憩を取りながら順調に距離を稼いでいた。

昨日の運転から僕はやたらと通りや池の名前が書かれた標識を意識して見るようになっていた。昨日、惜しむらくもホストハウスを旅立ち車を走らせていると立て続けに、「ジョセフィーナブリッジ」「ラッセルクリーク」「ジョンズタウンズブッシュ」といったホストファミリーと被る名前の標識があちこちで散見されたからだ。あまりの偶然にオーストラリアの大地が別れを演出しているのか疑ったほどだ。

 

 

 

 


そんなこんなで今日も運転をしていると橋の上に標識が掲げられていた。何気なくそれを見ると「DEADMAN CREEK(死人の池)」と書かれている。何とも不気味な名前の池だ。近隣住民がいそうな場所ではなかったが、近くにこんな池があれば土地価格は急落しそうだ。

 

 

 

そしてその標識を境にやたらと動物の死骸が路肩に寄せられているのを見かけるようになる。カンガルーだけで10頭ほどは目撃した。後は正体不明の小動物の亡骸が転がっていた。死屍累々とはこのことである。

 

 

 

 


無事に不気味ゾーンを抜け出し、本日最初の大きな街であるマッカイに辿り着いた。ここで車を止めて観光でもしようと試みたが、どこもかしこも駐車場がいっぱいで止められず断念した。運転しながら町並みを見たところ、綺麗で割と新しそうな街だった。

 

 

 

一つ目の休憩ポイントを逃した僕は次の街を目指した。

 


ーー次に標識に示されている街は…「SARINA」?聞いたことがないな。大きな街ではなさそうだが標識に乗っていることだし行ってみよう。

 

 

 

標識に乗っていなければ絶対に素通りしていたであろうサリーナに向けて僕は車を走らせた。

 


マッカイから30kmほどの地点にその街はあった。予想していた通りの規模の街だ。古そうな街だがそれがまたレトロな雰囲気を醸し出していてかなり僕好みだ。

 

 

 

僕は昼飯前にこの街を歩いて見ることにした。インターネットで調べても日本語では語学学校の情報ぐらいしか出てこない。英語版のWikipediaでも載っている情報はお世辞にも多いとは言い難い。ここはどうやら本当にローカルな街らしい。僕はすでにセリーナを好きになっていた。

 

 

 

歩いていると、小さな商店がいくつか立ち並んでいる。空き家のような食堂や海外のファミリードラマに出てきそうなホームメイドパイの店。その中でも僕の目を引いたのが雰囲気のあるレトロなパブだった。映画でしかこんな雰囲気のある店は見たことがない。否、実際目の前にあるのだから映画以上の雰囲気がある。

 

 

 

僕は直感で決めた。今日はここに滞在して、夜にもう一度このパブを訪れよう。それだけの価値がこのパブにはある。

 

 

 

そうと決めると車に引き返し、出発前に水に浸しておいたパスタを使って調理し始めた。水に浸す作戦は調理時間の節約だけでなく、味も生パスタに近づく調理法だ。想定通り、茹で時間が1分で済んだ。

 


幸いにも駐車場の目の前にテーブルがあったためそこで僕はパスタをいただくことにした。初めは鍋のまま食べようと思ったが、セリーナの雰囲気に感化され、食器を取り出した。他のテーブルでランチを食べていた人達は急に食器やスプーン、フォークを出して本格的なランチを食べ始めた外国人を奇異な目で見ていた。

 

 

 

食べ終わると近くの水道で使用した鍋類を洗った。洗剤を持っていないのでできるだけ綺麗に汚れを落とした。

 

 

 

 


その後、僕はトラベラーズインフォメーションに行くことにした。パブで飲むにしても車を一晩泊められるかを確認しなくてはいけなかったからだ。こういう時に車は非常に不便である。

 


小さい街だがトラベラーズインフォメーションがあるということはある程度旅行者が来るということだろうか。街を歩いていてもそのような風貌の人には出会わないし、旅行者用の店もあまり見ないのだが。

 


インフォメーションに入り、スタッフらしいお姉さんにこの辺りに一晩車を停められる駐車場があるかを聞くと45分程度車をマッカイ方面に走らせないとないということだった。今晩はここで車中泊のつもりだったが思わぬ事態に、その後の予定を変更せねばならなくなってしまった。

 

 

 

インフォメーションを訪れた後にパブの前を通った時、2時台にしてすでに飲み始めているオレンジ色の仕事着を着たおじさんに声をかけられた。

 

 

 

「おい!あんた、このパブをチラチラ見てたよな?飲みたいの?」

「飲みたいんですが、車で来てるので…この辺りに車を一晩停められる場所があれば助かるのですが。」

「そんなの、その辺に停めてたって構わないよ!ほら、そのへん」

 

 

 

そう言ってこのおじさんが指したのは僕が停めているスペースではないか。しかしインフォメーションのお姉さんには何も言われなかった。

 


「ここに停めてもいいんですか?」

「みんないつも停めてるよ!」

「そうですか…わかりました!夜になったら再訪します!」

 

 

 

インフォメーションのお姉さんとこの酔っ払いのおっさんの情報の信ぴょう性については天秤にかけるまでもないのだが、この際この酔っ払いの言うことを信じてみよう。もしかしたら、もしかするかもしれない。

 

 

 

少し安心した僕はまた街を探索し始めた。訪れたかったセリーナの博物館はもう閉館していたのだが、その裏にあるギャラリーが開いていたためそこに入ることにした。入り口には優しそうな老婦人が受付員として座っている。

 


「こんにちは!ギャラリー、今からでも入れますか?」

「ええ、いいわよ。ちょっと待ってね。誰もこないと思って電気を切ってしまったから」

 

 

 

そう言ってこの老婦人はギャラリーの電気をつけた。中には10枚程度の絵画が飾られている。どれも油絵のようだ。

 


「綺麗な絵ですね。あなたの作品もあるのですか?」

「ええ、実は、これ。」

 


老婦人は照れ臭そうに花の抽象画を指した。タイトルは「BUSY DAYS」、作者名は「ドロシー」とある。花が散らされたようなその絵はそう言われてみると確かに忙しそうな気もする。何よりもその絵の色使いやタッチが優しくて、ドロシーの人柄が表れているような気がした。

 


僕が最も目を引かれたのは馬とさとうきび畑の風景画だった。ケアンズからここまでの道で幾度となく見たような、そんな風景が描かれていた。初めて見た絵なのにどこか懐かしい気分になった。

 

 

 

どの絵も洗練されたものだったが、全てセリーナの画家によって描かれたものらしい。それも3~4週間に一度は作品が全て更新されるとのことだった。

 


ドロシーと世間話を閉館時間までした後、僕は車を海沿いまで走らせることにした。地図を見るとどうやら10分程度の場所に「アームストロングビーチ」というところがあるらしい。パブまでの時間潰しといこう。

 

 

 

 


ビーチまでの景色はそれこそカントリーロードが流れそうな風景で左右に農園が広がる。この先に海なんてあるのだろうかと不安になったあたりで海の気配を感じ始めた。海の近くは何となく植物の感じとか、家の作りが変わるような気がする。

 

 

 

 


車を停め浜に近づいた。「広い」それが僕の最初の感想だった。とにかく浜の長さが長いのだ。そして人がほとんどいない。唯一、波に足をつけ釣りをしていた強面のおじさんがいたので例によって近づいていった。おじさんもこちらに気づいたので挨拶をした。

 


「こんにちは!釣れてます?」

「今で4匹かな。ほら」

 


そういって魚を入れている箱の蓋をとって見せてくれた。手のひら大のボラのような魚が確かに4匹入っている。話を聞くと、このマーウと名乗るおじさんは今はマッカイに住んでいて、ビーチ沿いにある甥の家に遊びに来ていたらしい。釣る様子を眺めているとその甥と息子もこちらに来てしばらく互いの話をしあった。マーウが生まれたのは「トルストイ」だと仕切りに言われたのだがこの時は分からなかった。後から調べると「トレスストレイト」つまりトレス海峡諸島のことだった。僕は彼のことをアボリジニと踏んでいたが、トレイストレイトアイランダーだったか。

 


その後もマーウは二、三匹大きなボラ的魚を釣っていた。僕たちは最後に写真を撮り、その場で別れることとなった。

 

 

 

その後、再度パブの近くの駐車場に戻り僕は日が暮れるのを待った。別に待たずとも入れるのだが、どうせ入るならば賑わう時間帯に入りたいと思ったからだ。

 

 

 

辺りが暗くなり始めた頃、僕は満を辞してパブに入った。客は僕一人だけだったが雰囲気に浸るには丁度良い。僕はパブを取り仕切っているおかみさんらしき人物にオススメのビールをお願いして着席した。外で見るよりも雰囲気が抜群にいい。着てよかったと思った。後から来たペーターという元軍人のお爺さんに、ここからシドニーまでの距離を聞くと「24時間運転したら着くよ」とのことだった。まだまだ先は長いようだ。

 

 

 

酔うと全てを誰かに委ねたくなってしまう。二杯目以降は酒も料理も言われるがまま注文した。否、観光客としてはそうあるべきなのかもしれない。知らない町でおすすめの酒と料理を食べ飲みしながら酩酊する。これほど気持ちのいいことを僕は他に知らない。

 

 

 

現在進行形の日記なのでこの後、何が起こるかわからないが長くなりすぎたのでひとまずこれで終わりとする。

 

(チキンパルメジャーナ15ドルと黒ビール7.5ドル)

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